研究課題/領域番号 |
20KK0238
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 勝紀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70633494)
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研究分担者 |
清家 弘治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (20645163)
寺山 慧 横浜市立大学, 国際総合科学研究科(鶴見キャンパス), 准教授 (50789328)
朝倉 巧 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 講師 (60778207)
松田 匠未 明治大学, 理工学部, 専任講師 (80759861)
野牧 秀隆 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 主任研究員 (90435834)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 堆積物音響 / 底生生物 / 深海 |
研究実績の概要 |
海洋開発や地球温暖化に伴う環境改変が、海洋環境、特に海底下の堆積物中の生物や環境に与える影響については未だ不明な点が多い。本研究では、先行研究で開発を進めてきた音響による堆積層内3次元可視化システムを応用し、サウサンプトン大学の底生生物研究グループと共に実施する環境制御水槽を用いたラボ実験やフィールド観測を通じて、堆積物中の底生生物相や環境動態を時空間的に計測・評価するための基盤を構築する。その基盤は、堆積物中の環境動態評価における世界的な指針となると共に、海底資源開発など今後環境変動の把握がますます重要になる深海フィールドの環境評価への足掛かりとなる。日本独自の技術を、世界をリードする研究グループとともに発展させていくことで、海底生態系に関する日本発の環境評価指標を確立し、当該分野におけるイニシアティブの獲得を目指す。今年度は、メールやオンラインの会議により、国内外の研究者らと当該研究について議論を進めた。また、前年度に開発した深海2000mまでを計測対象とする新しい計測システム(堆積層内3次元可視化システム)を用いた室内実験を各種実施し、さらに、大深度有人潜水艇に搭載し、初の深海フィールドにおける試験を実施した。動作は良好で、今後の沿岸域から深海に至るまでの底生生物調査が期待される。また、海底堆積物内の音波伝搬シミュレーターを開発し、特に底生生物が形成する巣穴中の音波伝搬について検証した。実験と比較して、巣穴の長さの計測においては良い精度を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、COVID-19の影響により渡欧することは困難であったが、メールやオンラインの会議により、国内外の研究者らと当該研究について議論を進めた。相手国側の規定により、現時点では海外研究者の受け入れが困難であるため、渡欧スケジュールのメドはたっていないものの、以下に示す内容について進捗があり、新しいシステムの開発および実海域における試験に向けた取り組みは研究計画に対して概ね順調に進んでいる。 仕様検討・システム開発:前年度に開発を進めた深海2000mまでを計測対象とする新しい計測システム(堆積層内3次元可視化システム)を用いた室内性能実験を行った。またシステム全体の耐圧試験も実施した。さらに、大深度有人潜水艇に本計測システムを搭載し、初めて深海域における海底下の音響データの取得に成功した。一時、モータが停止するなどの不具合が発生したものの、開発したシステムは狙い通りの動作をしたといえる。次年度以降の深海調査にも本システムを利用することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
沿岸から深海における底生生物の分布を明らかにするための室内・フィールド実験を進める。繰り返し計測回数や間隔は、底生生物の時間的な動きが現時点では明らかでないため、実験環境立ち上げ時のデータを基に検討する。国際共同研究先の理学系共同研究者らの意見を基に、観測対象種を絞り込み(浅海から深海に広く分布し、海底環境を改変しやすい二枚貝、ゴカイを想定)、音波伝搬シミュレーションなどを用いて、最適な周波数や分解能を検討しながら開発を進める。基本的には国内において実海域試験(相模湾や弓ヶ浜などを予定)を実施し、情勢を見ながら相手国の海域における実験準備を進める。現時点では、次年度の2月に渡欧を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で渡欧が困難であったため、主に旅費として予定していた分、次年度使用額が生じた。
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