研究課題/領域番号 |
20KK0240
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
武田 重信 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (20334328)
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研究分担者 |
近藤 能子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (40722492)
堀井 幸子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (50767879)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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キーワード | 海洋科学 / 植物プランクトン / 鉄 / 海洋酸性化 / 北太平洋 |
研究実績の概要 |
海洋酸性化が植物プランクトン群集の鉄利用に及ぼす影響を、鉄が生物生産の主な制御要因となっている東部北太平洋の亜寒帯域、亜熱帯循環域、沿岸域において調べ、その効果を鉄と錯体を形成する有機配位子および腐植様物質等の海域特性と関係付けて解明する研究に取組んだ。そのため、2022年6-7月に実施された米国調査船の研究航海に日本と米国の研究者が乗船し、ワシントン州沿岸の湧昇域、東部北太平洋亜寒帯の鉄制限海域、東部北太平洋亜熱帯の貧栄養海域の3定点で船上培養実験を実施するともに、定点間の複数の測点で海洋観測を国際共同で行い、pHおよび光量変化が植物プランクトンの鉄要求量ならびに植物プランクトン群集組成にどのような影響を及ぼすかを評価した。 船上培養実験においては、海洋酸性化による植物プランクトンの増殖応答が東部北太平洋の沿岸域と沖合域で異なることを明らかにした。また、東部北太平洋亜寒帯域の表層水のFe(II)酸化速度は亜寒帯域としてはやや高い値となり、同海域では腐植物質様の配位子が表層に存在していた可能性が考えられた。さらに現場観測からは、各海域のプランクトン群集構造について生物量、種数、多様度の点で違いが見られたことから、鉄濃度環境に対するプランクトン生態系の応答に違いが生じる可能性が予想された。 これらの結果から、海水中での鉄の化学的な存在形態を支配する代表的な鉄有機配位子の海域による組成の違い、特に有機物分解過程で生成する錯形成能のやや弱い腐植様物質と、微生物が鉄取り込みのために生産する錯形成能の強いシデロフォア様物質の存在割合の違いが、海洋酸性化に対する植物プランクトン鉄利用の応答を左右し得ることを示した。
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