研究課題/領域番号 |
20KK0243
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
寺田 昭彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30434327)
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研究分担者 |
黒岩 恵 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00761024)
徳山 英昭 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10363029)
末永 俊和 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (80828377)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 亜酸化窒素 / N2O還元細菌 / メタゲノム解析 / メタトランスクリプトーム解析 / 嫌気性アンモニア酸化 / 脱窒遺伝子 / ゲル固定化 / 動力学的解析 |
研究実績の概要 |
前年度から引き続き運転を行っている亜酸化窒素(N2O)供給型嫌気性アンモニア酸化用バイオリアクターの微生物叢の解明と活性評価を実施した。このバイオリアクターで集積されたバイオマスのメタゲノム解析を実施し、N2O還元細菌を含めた18種の高品質なドラフトゲノムの構築を達成した。このドラフトゲノムを確認したところ、このうちの2種のドラフトゲノムは優占化されていたChloroflexota門、Anerolineae綱であることが明らかになった。また、その他のドラフトゲノムとして、Proteobacteria門、Armatimonadota門、Acidobacteriota門などに属する系統であることを明らかにした。また、ドラフトゲノム内の窒素酸化物の還元に関する遺伝子型を評価したところ、多くの種類は一部の脱窒遺伝子が欠落した非脱窒性N2O還元細菌であることが示唆された。 これらの集積バイオマスから優れたN2O還元細菌の獲得に向け、分離培養を行った。数種の分離培養に成功し、これらの細菌がN2O還元酵素をコードする機能遺伝子を保有することを確認した。この研究成果によりゲノム解析およびN2O消費に関する動力学的解析を進める準備が整った。 さらに、研究室で分離培養に成功しているN2O還元細菌のゲル固定化と動力学的解析を進めた。ゲル固定化で用いるアルギン酸カルシウム濃度を変化させた際の固定化細菌のN2O消費活性を評価し、アルギン酸カルシウム濃度が高くなるにつれて、機械的強度が高くなること、酸素濃度に対するN2O消費活性の低下を緩和できることを明らかにした。一方、アルギン酸カルシウム濃度を上げることで見かけ上のN2O消費活性が下がること、見かけ上のN2Oに対する半飽和定数には大きな変化を与えないことを確認した。得られた結果より、ゲル固定化のために適切なアルギン酸カルシウム濃度の範囲を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の上半期はコロナウイルスの影響により、渡航制限と先方の受入制限が続き、研究者の受入および渡航は延期することにしたが、下半期に研究者1名が国際共同研究先に2か月間渡航し、嫌気性アンモニア酸化用バイオリアクターのメタトランスクリプトーム解析を実施した。この解析内容に関しては、先方と継続して実施している月例の研究ミーティングを通して密に議論したことにより、予定を上回るペースで解析を行えた。当初、渡航先で行う予定であったメタゲノム解析やN2O還元細菌の電子伝達機構について議論に関しては、申請者らのグループ内および国内の共同研究先の研究者とチームを組み、研究を重点的に進めた。また、国際共同研究先との合同セミナーを実施し、学生同士の研究内容の相互理解を深めるとともに、博士後期課程学生が先方へ滞在して新たな共同研究を実施する機会となった。以上より、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は、2022度末に実施した嫌気性アンモニア酸化バイオリアクターに生息する微生物群集のメタトランスクリプトーム解析から、活性の高いN2O還元細菌の選定を行う。さらに、N2O還元細菌の分離培養、ゲノム解析、動力学的解析を継ぎ目なく実施し、有用なN2O還元細菌の機能・活性を紐解くとともに、排水処理分野以外の分野での水平展開を目指す。 2023年度は、1名の博士後期課程学生が5か月間国際共同研究先に渡航する。これまでの共同研究で得られたN2O還元細菌の生理生態を組み入れた数学モデルの構築とシミュレーションにより、N2O削減に向けたバイオリアクターの運転条件を明らかにする。さらに、N2O還元細菌の電子伝達機構についての検討を進める。この検討に並行して、N2O還元細菌のゲル固定化の研究を進める。ゲル内のN2O濃度プロファイルを取得し、拡散・反応モデルの構築に必要となるパラメータ値の取得を目指す。 以上の項目を融合することにより、省エネ型窒素除去を行う嫌気性アンモニア酸化プロセスにおけるN2O還元細菌の機能解明と工学的応用の価値についてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度上半期はコロナウイルスによる渡航と先方の受入制限が続いたため、当初予定した研究室の渡航が行えなかった。最終年度である2023年度は、博士後期課程学生1名の従来よりも長い滞在を計画する。これに加え、参画研究者の国際共同研究先の渡航による研究実施に使途する計画である。
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