研究課題/領域番号 |
20KK0245
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
谷保 佐知 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00443200)
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研究分担者 |
山下 信義 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (40358255)
山崎 絵理子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, JSPS 特別研究員 (10884819)
殷 熙洙 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (60343828)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS) / 残留性有機汚染物質(POPs) / 網羅分析 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
地球規模汚染が深刻化しているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に代表される有害有機フッ素化合物(PFAS)について、今まで知られていなかった多数の関連物質が環境中から次々に発見されており、数千種類を超える有害物質の全容を把握する科学技術開発が急務である。最も有望な飛行時間型質量分析計による網羅分析は人力でのデータ解析に限界があるが、最先端の人工知能を用いた解析技術が中国で開発中である。日中国際共同研究により両者を融合した人工知能網羅分析技術(AI-TOFMS)を開発し2,000種類以上のPFAS関連物質を数十分で測定可能な新技術を確立する。 本年度は、人工知能網羅分析に適用するための大気環境試料の採取・測定方法の開発を行った。大気試料の捕集方法として、捕集材に石英繊維ろ紙を用いて分級して粒子を採取すると同時に、重ねてポリウレタンフォームおよび活性炭繊維ろ紙を使用し、ガス成分も捕集できるシステムを構築した。機器分析においては、イオン性のPFASはLCMS/MSを、中性のPFASはGC-MS/MSを用いた測定方法を開発した。その結果、FOSAsは20~40%程度の回収であったため更なる改善が必要ではあるが、揮発性の高い4:2FTOHでも60%程度の回収があることを確認できた。一方、実大気環境試料から、diiodofluoroaokanesを初めて検出され、今後の大気中のPFASの測定方法に利用可能な測定方法を開発することができた。 さらに、土壌、雨水、農業用水などの試料採集、分析を行い、とのようなPFASに暴露・蓄積しているのかを検討している。その成果の一部をEnvironmental Monitoring & Contaminants Research誌(題名「Distribution of PFAS in an irrigated Andosol paddy field based on rice paddy lysimeter」)に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
捕集・機器測定方法の開発や、環境試料の採取分析等は順調に実施することができた。一方で、新型コロナウイルス感染症対策により、国内外の移動が制限されたため、現地での共同研究が実施できず、また、予定していた国外からの人材を招聘することができなかったため、人材交流等の国際共同研究の推進に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
大気試料の捕集方法については、おおむね良好な回収率が得られたものの、一部のPFAS(FOSAs等)は十分な回収を得ることができなかったため、さらなる改善を図る。また、水試料においては、弱イオン交換カラムを用いた既存の抽出方法ではイオン性のPFASは十分な抽出効率がある一方で、中性のPFASの抽出が困難であった。網羅分析するためにも中性のPFASを含む幅広いPFASの抽出方法の検討を行う。GC-MS/MSによるFTOHs等の定性・定量において、大気試料以外の土壌、水等の試料ついても抽出方法、色素や油等の夾雑物の除去が可能な精製方法を用いて包括的な分析・解析による測定条件を拡大するなど分析工程の高度化を図る。さらに、開発した捕集・抽出方法を用いて、連携各国の大気・水・土壌等の試料分析により、AI/ディープラーニングのための測定データの蓄積を進め、南京大学と人工知能網羅分析技術の開発する。 また、共同研究連携先とは、オンライン打合せ等を実施し交流を強化する他、国外移動の制限か解除された後は、現地での調査や開発した技術の指導を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染対策により、国内外の出張が制限され、現地調査・指導や、学会発表等も行うことができなかった。また、外国から招聘予定であった人材も、感染対策により招聘ができなくなったため、次年度使用額が生じた。翌年度に、国内外の出張の緩和や国外からの招聘が可能になれば、現地等での調査・打ち合わせを行う。困難な場合は、オンライン打ち合わせ等により研究を推進する。
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