研究課題/領域番号 |
20KK0247
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古米 弘明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40173546)
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研究分担者 |
西川 可穂子 中央大学, 商学部, 教授 (20345416)
二瓶 泰雄 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 教授 (60262268)
比嘉 紘士 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 助教 (60770708)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 海洋プラスチック / 東南アジア / マングローブ林 / 画像解析 / 二枚貝 / 微量汚染物質 |
研究実績の概要 |
1.研究対象地域の決定と衛星画像による予備解析:選定したマレーシアの現地サンプリングサイトであるマングローブ林に対して、地元当局から調査実施の許可を得た。衛星画像データ(Sentinel-2とDove)を入手して、大気補正モデルと近赤外域と青のバンドデータを用いたプラスチックごみ検出モデルを適用した結果、鎌倉市由比ガ浜海岸に散乱するプラスチックごみの分布を検出できることを確認した。 2.市街地におけるプラスチックの存在量評価:植生指標カメラから得られる近赤外線 (NIR),赤(R),緑(G)の バンドデータのクラスター分析を行い、NIR/G 比の閾値を設定することでPET以外の路上にあるプラスチックを検出する手法を考案した.また、機械学習モデルYOLOを用いてPETボトルを検出する可能性を見出した。 3.河川におけるプラスチック輸送量の評価:連続的な河川水表面のIPカメラ撮影画像の色差情報を解析することで,水面と人工系,自然系ごみとの識別分類を行った.人工系ごみ輸送量は増水期の方が減水期より顕著に大きい現象が確認された.また、河川浮遊のマクロプラスチックの面積や種類判別のための新たな画像解析手法も開発した。 4.河川におけるマイクロプラスチック汚染の調査:河川のマイクロプラスチック汚染調査から、流域の居住者数とマイクロプラスチック汚染が比例関係にあること、空港近くの河川ではタイヤ摩耗粒子が観察されることから自動車や飛行機由来の汚染の可能性があることが推測された。 5.光触媒利用によるマイクロプラスチックの劣化・分解:過酸化水素とUV照射によるポリエチレンとポリスチレンの劣化実験において、複数の方法で物理化学的特性の変化を調べた。断片化とともに酸素含有官能基の増加が検出されること、有機炭素濃度が増加すること、励起蛍光マトリックスやゼータ電位に違いが生じることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定した研究対象のKuala Selangor estuaryへのアクセスや調査実施の困難性から、マレーシア大学から近いPort Klangにあるマングローブ林を研究対象として選定することができた。入手できた高解像度の衛星画像のバンドデータを活用することで、沿岸域のプラスチックゴミの広域検出のための候補モデル式も考案できている。また、新たなIPカメラによる連続的な河川水表面撮影と画像解析法、植生カメラ画像から得られる近赤外線 (NIR)を含む 3 バンド画像データを用いたプラスチック検出手法などは開発されている。しかし、想定以上のコロナ禍継続の影響を受けて、研究調査対象予定のマレーシアにおける河口域とマングローブ域への現地訪問が不可能なままである。また、現地共同研究者も、戸外での調査活動の制限を受けて限られた内容でしか実施できていない。したがって、現地サンプリング調査、定点カメラシステムの設置、ドローンによる写真測量などは実施できていない。なお、定期的なオンライン会議を開催して、研究進捗を報告することを通じて、コロナ禍での調査研究の計画の見直しなどを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象として、Port Klangに位置するマングローブ林を決定したことから、地元当局から現地調査実施とドローン飛行の許可を得て、研究チーム全体として現地踏査やサンプリング、ドローン撮影画像の入手を行う。また、地元行政機関などからKlang Riverの流量・水位情報、流域の降水量情報などを入手して、共同研究者間の情報共有を進める。選定した研究対象地域へ2022年度中に日本人研究者の長期での現地訪問が困難な場合には、定点カメラ設置は延期する一方で、使用予定のドローンと近赤外カメラを調査現地のマレーシア大学に提供して、ドローン調査の準備までとする計画とする。衛星画像の解析においては、市街域や森林域においてプラスチックごみの誤検出があったため、現在、その原因の特定とモデルの改良を進める。 現地研究者によるマイクロプラスチック汚染の現地調査として、セジメントや二枚貝採取を実施する。そして、二枚貝(Anadara granosa)によるマイクロプラスチックの取り込みと生体蓄積のための実験系を構築する。なお、微細なマイクロプラスチックからの細菌分離は極めて難しいことから、プラスチックゴミのバイオフィルムを対象に菌叢解析を進める。微量汚染物質が吸着したマイクロプラスチックのテトラサイクリンを吸着させたポリエチレンのUV照射分解実験の準備は終了したことから、プラスチックの劣化によるテトラサイクリンなどの新興微量汚染物質の吸着性変化やその分解に関して本格的な実験へ進む。 上記の研究の進捗を確認するために、シンガポール国立大学とマレーシア大学の研究者を含めて研究分担者と定期的にオンライン会議を開催して、調査や実験の成果について討議を実施する。また、今年度予定する現地踏査を踏まえて、本研究プロジェクトのホームページの開設を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、研究対象であるマレーシアの現地への海外出張を実施することができなかったため。
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