研究課題
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、バイオガスを極めて高い効率で電力に変換できる発電デバイスであるが、バイオガス中に含まれる微量の硫化水素(H2S)により改質触媒や燃料極が被毒されて発電効率が大きく低下することが報告されている。そこで本研究では、脱硫剤として利用できるバイオチャーの開発に取り組んだ。2022年度は、密度汎関数理論(DFT)を用いて、グラフェン中に窒素原子が置換したpyridinic-Nとoxidized-Nと呼ばれるサイトを有するシートに対してH2S吸着時の解離反応の活性化障壁を評価し、pyridinic-NがH2Sを選択的に酸化除去することを明らかにした。2023年度は、DFTにより、Ni担持CeO2上でのメタン乖離の反応機構を解析し、活性化エネルギーを評価したところ、メタンドライリフォーミング(DRM)試験により実験的に得た活性化エネルギー(0.69 eV)と同等の値(0.80 eV)が得られ、Niナノ粒子を正に帯電させることが活性化エネルギーを下げる戦略として有望であることを示した。ペーパー触媒(PSC)のDRM反応に対する活性向上を目指し、CeO2にZrO2を固溶させて酸素吸蔵放出能(OSC)を高めた花びら形状Ce0.5Zr0.5O2を無機繊維ネットワーク内に分散させたNi担持PSCを開発した。当PSCは、DRM反応に対して高い改質活性および炭素析出耐性を示し、これをSOFCの燃料極上に配置することで、模擬バイオガス直接供給時のSOFCの出力向上と安定作動に成功し、当成果をまとめた学術論文が国際学会誌Fuel Cells誌に掲載された。
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Fuel Cells
巻: 24(1) ページ: 56-66
10.1002/fuce.202300133