研究課題/領域番号 |
20KK0249
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
井田 旬一 創価大学, 理工学部, 教授 (20409783)
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研究分担者 |
小山 光彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (50794038)
中國 正寿 香川大学, 農学部, 博士研究員 (90822643)
秋月 真一 創価大学, プランクトン工学研究所, 講師 (60772340)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 微細藻類-硝化菌固定化遮光ゲル共存系構築 / 窒素含有排水処理 / 遮光ゲル / 途上国での水処理 |
研究実績の概要 |
本課題では、メキシコをフィールドとし、「微細藻類-硝化菌固定化遮光ゲル」共存系による高アンモニア含有排水の低コスト処理の実現を目的としている。3年目である今年度は、昨年度実施予定であった「遮光ゲルの問題点抽出と改善」と「公開シンポジウム」を実施した。従来の遮光ゲルは黒色であるためリアクター内の温度上昇を引き起こしやすい課題が生じていた。昨年の研究により硝化菌の光阻害は主に短い波長領域(380-550 nm)起こることが確認されていたため、この範囲を遮光できれば黒色材料よりも吸収波長範囲の狭い材料でも遮光ゲルが調製可能であると期待された。そこで、吸収波長の異なる青・赤・黄色の3種の遮光材を用いて添加濃度0.5wt%で遮光ゲルを調製し、その光阻害緩和性能および温度上昇について検討した。光照射強度は1600 μmol photons m-2 s-1に調節した。結果は、上記波長域の吸収が高い順に遮光性能が高く、黒、黄、赤、青の順で高い硝化性能を示した。また黄色材料では黒色の63.9%の遮光性能であった。そこで次に、黄色遮光材の濃度を2.0wt%まで増やして同様の実験を行った。その結果、黄色遮光剤の濃度を増加させることでより高い硝化性能を示し、黒の 4 倍の濃度である2.0wt%で黒の硝化性能の8割程度を示した。一方、リアクターの温度上昇を見ると、0.5wt%黒色遮光剤では、Controlと比較して2.5 ℃上昇したのに対し、2.0 wt% 黄色遮光剤の条件では、1.0 ℃の温度上昇に留まり、黒色遮光剤と比較して温度上昇を抑制可能であることが分かった。この結果から、黄色遮光剤が黒色遮光ゲルの代替材料となり得ることが明らかとなった。また、公開シンポジウムでは、2名のメキシコの共同研究者を創価大学に招聘し、研究発表会を実施すると共に、今後の研究計画について議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる影響で昨年度実施できなかった「遮光ゲルの問題点抽出および改善」は、メキシコの連続実験に向けた問題点抽出は実施できなかったものの、リアクター内の温度上昇を抑制可能な黄色遮光ゲルの調製に成功した。また、当初の計画にあった「公開シンポジウム」では、メキシコの研究者2名を日本に招聘し本学で開催できた。シンポジウムには、共同研究者をはじめ多くの研究者が参加し、それぞれの研究成果の報告および意見交換も実現した。しかし、今年度実施予定であった「リアクターの検討・作製」は途中段階であり、「長期連続運転」は未実施であることから「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度実施予定であったメキシコにおける微細藻類-硝化菌固定化遮光ゲル共存系の長期連続運転を実施し、実廃水を用いた処理性能評価を行う予定である。また、日本でも現在、屋内環境における長期連続運転が準備段階であり、メキシコ現地だけでなく日本での長期連続運転も同時に行い、それぞれの処理性能を比較する。最終年度である今年度は、メキシコでの長期連続運転を実施した後、得られたデータから廃水処理性能だけでなく経済性評価を行い、包括的視点から「微細藻類-硝化菌固定化遮光ゲル」共存系の実現可能性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では今年度実施予定であった、長期連続実験用のリアクターの設計と発注、および連続実験の開始がコロナによる計画の遅れから実施できなかった。次年度でこの分を実施予定であり、そのために資金を繰り越した。
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