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2022 年度 実施状況報告書

がん治療効果予測のための電子スピン共鳴法による新規酸素濃度測定技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0250
研究機関北海道大学

研究代表者

稲波 修  北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)

研究分担者 安井 博宣  北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
永根 大幹  麻布大学, 獣医学部, 講師 (10772064)
山下 匡  麻布大学, 獣医学部, 教授 (30220338)
赤羽 英夫  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (00552077)
藤井 博匡  北海道医療大学, その他, 客員教授 (70209013)
研究期間 (年度) 2020-10-27 – 2024-03-31
キーワードがん診断 / 低酸素性がん細胞 / 組織酸素濃度 / 電子スピン共鳴法 / OxyChip
研究実績の概要

令和3年度は分担者の赤羽、藤井らによって開発・導入した可搬型ESR装置を用いて、北大では担癌マウスがん組織のレドックスイメージングを、麻布大ではがん組織の酸素濃度の推移を計測する技術を確立し、放射線照射後に腫瘍組織のレドックスレベルの低下とオートラジオグラフィーによる糖代謝との間の相関関係が照射によって大きく崩れることをあきらかにした。レドックスイメージングでは機器の可搬性を生かして、北大全学共同利用のアイソトープ施設に持ち込みFDGによる糖代謝とレドックスイメージングの同時測定のプレリミナリーな実験ではあるが、そのトライアルを行い方法論の開発にも目処が立った段階である。また酸素濃度計測では自作したOxychipを用いて正常組織および腫瘍組織の測定も開始しているマウス乳がんモデルを作成し、腫瘍免疫を活性化させる薬剤を処理すると腫瘍体積の縮小と生存期間の延長が観察されたが、組織酸素分圧に変動は観察されなかった。これまでの研究により、X線照射や細胞障害性のある抗がん剤は腫瘍内酸素分圧を上昇させることが明らかになっている。そのため免疫チェックポイント阻害剤など腫瘍免疫活性化療法に対し、腫瘍内酸素分圧による効果予測は困難であることが示唆された。本研究では北大と麻布大の大学院生・学部学生が深く関わっており、令和4年度はコロナ禍が一旦落ち着いた時期に麻布大学の研究者志望の学部女子学生(獣医学科5年次)を2022年9月10日から9月27日まで海外カウンターパートのダートマス大学に派遣することができた。その際に派遣学生はダートマス大学ではPDMS封入酸素感受性ESRプローブ(Oxychip)の作成方法を習得すると共に、そのキャリブレーション法についても習得した。また、コロナ禍の中でも国内での学会発表が主ではあるが、数多くの大学院生や学生発表を行う事ができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和4年度もコロナ禍ではあったが、やや緩傾向が出てきた中で、本研究のカウンターパートのダートマス大学のクプサミー研究室に17日間の日程で派遣し、国際共同研究として持続的に研究を進める事ができるようになった。また、オキシチップの作成法など新技術を麻布大でも作成可能となり、今後の研究の遂行に重要な技術を導入することが出来た。また、本研究において可搬型ESR装置の導入が重要で大きな力を発揮しており、北大ではPETイメージングとレドックスイメージング、麻布大学では乳癌組織の組織酸素濃度測定のプレリミナリーな実験を開始しており、令和5年度の最終年度に向けてベッドサイド小型ESR装置の癌の酸素代謝機能評価研究に向かって順調に進んでいる。研究の成果としては放射線によるがんのレドックス制御の再評価を現在検討しており、グルコース代謝との相関についての治験についてはまだ、結論づけられる段階ではないが、試み自体は新しいがん代謝に対する考え方を提示できると思っている。また、いくつかの成果については学生、大学院生が学会発表を行っており、今後の論文化に繋げることができる。研究者の育成という観点からも順調であると言える。以上の進捗状況から、ほぼ概ね順調に進捗していると判断している。

今後の研究の推進方策

令和5年度はコロナ禍のもだいぶ落ち着き、緩和されてきたので米国ダートマス大学への研究者と学生の米国との共同研究(学生、大学院生と共に渡米して実験結果やプローブ合成や測定法の検討)や研究打合せ、学会発表のための渡航を出来るだけ行う事を考えている。半月から1ヶ月程度の長期の研究交流については令和5年度は北大から大学院生を最低1名派遣する予定である。しかし、もし仮にコロナ禍再燃のため不可能あるいは回数や人数が制限される状況になってしまう場合は、その代わりに大坂大学とのESR測定のための若手研究者の技術開発のの共同研究に重点をおく。すでに開発されている可搬型小型ESRイメージング装置については、さらにその可搬性と高解像度である機器が望まれるので、そのための技術開発を赤羽、藤井らグループと動物実験を並行で進めながら行う予定である。この技術開発は将来、ベットサイドで利用可能なプロトタイプとなることを目指す。また、北大と麻布大ではアイソトープ利用施設での準備も整いPETイメージングとレドックスイメージングによる多面的な代謝イメージングのシステムならびにサーフェイスコイルによる経時的組織酸素経時的測定システムが小動物モデルで確立したことから、令和5年度は最終年度であり、最終年度は本格的にアイソトープによる糖代謝やアミノ酸代謝、低酸素領域とESRによるレドックスイメージングと酸素濃度計測を同一個体の動物を対象として測定方法を確立する。更に、マウスでの実験動物だけでなく、ラット、ウサギ、イヌなど中動物の腫瘍の形状、サイズに合わせたOxyChip ESRによる酸素分圧測定技術を構築することを目的として研究を進め、当初の目的である各種の移植腫瘍や代謝疾患の悪性度や予後判定の臨床検査ツールを開発することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

これまでコロナ禍の中で海外への学生派遣を大幅に控えてきたが、令和4年度の半ばから緩和傾向がでてきて、麻布大学から1名派遣することができた。令和5年度は更に1名の大学院生の派遣にその旅費に充てる予定として次年度使用額が生じた。また、令和4年度から急遽機器開発を行うために分担者となった赤羽、藤井の両先生に分担者として令和5年度の消耗品費が必要になったため次年度使用額が生じた。令和5年度は最終年度であり、学生の海外派遣と新たな分担者への支出計画を立てている。

  • 研究成果

    (30件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Dartmouth,The Geisel School of Medicine/National Cancer Institute(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Dartmouth,The Geisel School of Medicine/National Cancer Institute
  • [雑誌論文] Electron Paramagnetic Resonance Implemented with Multiple Harmonic Detections Successfully Maps Extracellular pH In Vivo2023

    • 著者名/発表者名
      Nakaoka Ririko、Kato Kazuhiro、Yamamoto Kumiko、Yasui Hironobu、Matsumoto Shingo、Kirilyuk Igor A.、Khramtsov Valery V.、Inanami Osamu、Hirata Hiroshi
    • 雑誌名

      Analytical Chemistry

      巻: 95 ページ: 3940~3950

    • DOI

      10.1021/acs.analchem.2c03194

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ubiquitin-Specific Protease 2 in the Ventromedial Hypothalamus Modifies Blood Glucose Levels by Controlling Sympathetic Nervous Activation2022

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto Mayuko、Fujimoto Masaki、Konno Kohtarou、Lee Ming-Liang、Yamada Yui、Yamashita Koya、Toda Chitoku、Tomura Michio、Watanabe Masahiko、Inanami Osamu、Kitamura Hiroshi
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 42 ページ: 4607~4618

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.2504-21.2022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ligand release from silicon phthalocyanine dyes triggered by X-ray irradiation2022

    • 著者名/発表者名
      Takakura Hideo、Matsuhiro Shino、Inanami Osamu、Kobayashi Masato、Saita Kenichiro、Yamashita Masaki、Nakajima Kohei、Suzuki Motofumi、Miyamoto Naoki、Taketsugu Tetsuya、Ogawa Mikako
    • 雑誌名

      Organic & Biomolecular Chemistry

      巻: 20 ページ: 7270~7277

    • DOI

      10.1039/d2ob00957a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intracerebral Transplantation of Mesenchymal Stromal Cell Compounded with Recombinant Peptide Scaffold against Chronic Intracerebral Hemorrhage Model2022

    • 著者名/発表者名
      Takamiya Soichiro、Kawabori Masahito、Kitahashi Tsukasa、Nakamura Kentaro、Mizuno Yuki、Yasui Hironobu、Kuge Yuji、Tanimori Aki、Takamatsu Yasuyuki、Yuyama Kohei、Shichinohe Hideo、Fujimura Miki
    • 雑誌名

      Stem Cells International

      巻: 2022 ページ: 1~10

    • DOI

      10.1155/2022/8521922

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 細胞老化の制御に基づく新しいがん治療戦略2022

    • 著者名/発表者名
      安井 博宣 , 小澤 拓実 , 藤本 政毅 , 稲波 修
    • 雑誌名

      細胞

      巻: 5555 ページ: 115-118

  • [学会発表] 分割照射による放射線抵抗性大腸がんSW480RR細胞株の樹立に於いてDNA量の差異が抵抗性に寄与する2023

    • 著者名/発表者名
      山下 匡、房知輝、藤本政毅、安井博信、辻 雅久、稲波 修
    • 学会等名
      第23回菅原・大西記念 癌治療増感シンポジウム(京大、京都)
  • [学会発表] 腫瘍のレドックスと糖代謝の非侵襲的なマルチモーダルイメージング解析に向けた基礎的検討2023

    • 著者名/発表者名
      加藤千博、安井博信、赤羽英夫、藤井博匡、榎本美穂、水野雄貴、久下裕司、永根大幹、山下 匡、稲波 修
    • 学会等名
      第23回菅原・大西記念 癌治療増感シンポジウム(京大、京都)
  • [学会発表] 生体深部で利用可能なケージド化合物の開発に向けたフタロシアニン誘導体のX線応答性の検討2023

    • 著者名/発表者名
      山下 柾、松廣 志乃、高倉 栄男、中島 孝平、稲波 修、小川 美香子
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会 (北大 札幌市)
  • [学会発表] 光免疫療法における薬剤の光反応メカニズムに関するESRを用いた検討2023

    • 著者名/発表者名
      後藤 悠人、高倉 栄男、中島 孝平、稲波 修、小川 美香子
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会 (北大 札幌市)
  • [学会発表] X線応答性のケージド化合物開発に向けたX線による超原子価ヨウ素化合物の結合切断反応の解析2023

    • 著者名/発表者名
      小河原 浩輝、高倉 栄男、中島 孝平、稲波 修、小川 美香子
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会 (北大 札幌市)
  • [学会発表] X線応答性のケージド化合物開発に向けたX線による超原子価ヨウ素化合物の結合切断反応の解析2023

    • 著者名/発表者名
      榎本 将聖、高倉 栄男、中島 考平、稲波 修、小川 美香子
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会 (北大 札幌市)
  • [学会発表] 放射線によるセノティティック治療の可能性2022

    • 著者名/発表者名
      安井博信、藤本政毅、小澤拓実、稲波 修
    • 学会等名
      日本放射線腫瘍学会「放射線による腺がんシンポジウム」(北大 札幌市)
  • [学会発表] X線照射および抗がん剤によって生じる老化細胞に対するYM155のセノリシス作用に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      小澤拓実、加藤千博、山下晃矢、安井博信、藤本政毅、稲波 修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会 第65回大会(大阪公立大学、大阪市)
  • [学会発表] 新しい可搬型EPRI装置を用いた腫瘍内レドックスイメージングによる放射線治療応答の非侵襲的解析2022

    • 著者名/発表者名
      加藤千博、安井博信、赤羽英夫、藤井博匡、榎本美穂、永根大幹、山下 匡、稲波 修
    • 学会等名
      日本放射線影響学会 第65回大会(大阪公立大学、大阪市)
  • [学会発表] HCT116細胞におけるエトポシドによって生じる細胞老化の選択除去法に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      小澤拓実、安井博信、加藤千博、山下晃矢、藤本政毅、稲波 修
    • 学会等名
      第165回日本獣医学会学術集会(麻布大学 オンライン)
  • [学会発表] スフィンゴミエリン合成酵素2は重症下肢虚血での骨格筋再生を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      水垣 ひなの, 永根 大幹, 水野谷, 赤羽 英夫, 安井 博宣, 稲波 修, 藤井 博匡, 相原 尚之, 上家 潤一, 山下 匡
    • 学会等名
      第75回日本酸化ストレス学会学術集会(筑波大 オンライン)
  • [学会発表] 低酸素条件下のがん細胞に対する光免疫治療(PIT)の有効性の評価2022

    • 著者名/発表者名
      白川 晴香、後藤悠人、中島孝平、高倉栄男、安井博信、小川美香子、稲波 修
    • 学会等名
      第165回日本獣医学会学術集会(麻布大学 オンライン)
  • [学会発表] 低酸素条件下のがん細胞に対する光免疫療法(PIT)の有効性の評価2022

    • 著者名/発表者名
      田邊裕晶、安井博信、山崎淳平、木之下怜平、山下晃矢、加藤千博、稲
    • 学会等名
      第165回日本獣医学会学術集会(麻布大学 オンライン)
  • [学会発表] 虚血性筋障害におけるスフィンゴミエリン合成酵素2の機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      水垣 ひなの, 永根 大幹, 佐藤 沙菜, 水野谷, 赤羽 英夫, 安井 博宣, 稲波 修, 藤井 博匡, 相原 尚之, 上家 潤一, 山下 匡
    • 学会等名
      第165回日本獣医学会学術集会(麻布大学 オンライン)
  • [学会発表] 低酸素性がん細胞における光免疫治療(PIT)と光線力学療法(PDT)の殺細胞効果の比較、検討2022

    • 著者名/発表者名
      白川 晴香、後藤悠人、中島孝平、高倉栄男、安井博信、小川美香子、稲波 修
    • 学会等名
      第61回電子スピンサイエンス学会年会(崇城大学 熊本市)
  • [学会発表] 生体深部で利用可能なケージド化合物の開発に向けたフタロシアニン誘導体のX線に対する反応性の解析2022

    • 著者名/発表者名
      後藤悠人、松廣志乃、山下 柾、中島孝平、高倉栄男、稲波 修、小川美香子
    • 学会等名
      第61回電子スピンサイエンス学会年会(崇城大、熊本市)
  • [学会発表] 可搬型EPRI装置を用いた非侵襲性レドックスイメージングによる同一個体でのがん治療応答変化の解析2022

    • 著者名/発表者名
      加藤千博、安井博信、赤羽英夫、藤井博匡、榎本美穂、永根大幹、山下 匡、稲波 修
    • 学会等名
      第61回電子スピンサイエンス学会年会(崇城大、熊本市)
  • [学会発表] スフィンゴミエリン合成酵素2の虚血性筋疾患における機能2022

    • 著者名/発表者名
      水垣 ひなの, 永根 大幹, 赤羽 英夫, Kmiec Maciej, Kuppusamy Perianna, 水野谷 航, 安井 博宣, 稲波 修, 相原 尚之, 上家 潤一, 山下 匡
    • 学会等名
      第61回電子スピンサイエンス学会年会(崇城大学 熊本市)
  • [学会発表] Sub-GHz CW-EPRにおける送信波位相雑音の検出感度への影響2022

    • 著者名/発表者名
      赤羽英夫
    • 学会等名
      第61回電子スピンサイエンス学会年会(崇城大学 熊本市)
  • [学会発表] 生体ラジカルの検出とラジカル関連疾患に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      稲波 修
    • 学会等名
      第61回電子スピンサイエンス学会年会(崇城大、熊本市)
    • 招待講演
  • [学会発表] 腫瘍のレドックスと糖代謝の非侵襲的複合画像機能解析に向けた基礎的検討2022

    • 著者名/発表者名
      加藤千博、安井博信、赤羽英夫、藤井博匡、榎本美穂、永根大幹、山下 匡、稲波 修
    • 学会等名
      日本酸化ストレス学会関東支部会(芝浦工大 東京)
  • [学会発表] Development of Compact EPR Imaging System for Biological Applications2022

    • 著者名/発表者名
      Hideo Sato-Akaba, Miho C Emoto, Hirotada G Fujii
    • 学会等名
      Asia-Pacific EPR/ESR Symposium 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 腸内細菌を介した酸素ナノバブル水による抗腫瘍作用2022

    • 著者名/発表者名
      永根大幹, 鈴木利美奈, 水垣ひなの, 丹羽智瑛, 内山淳平, 稲波修, 赤羽 英夫, 安井 博宣, 山下匡
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会 (名古屋大学 名古屋)
  • [学会発表] 虚血性筋障害におけるスフィンゴミエリン合成酵素2の役割2022

    • 著者名/発表者名
      水垣 ひなの, 永根 大幹, 佐藤沙菜, 水野谷 航, 赤羽 英夫, Kmiec Maciej, Kuppusamy Perianna, 安井 博宣, 稲波 修, 相原 尚之, 上家 潤一, 山下 匡
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会 (名古屋大学 名古屋)

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公開日: 2023-12-25  

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