研究課題/領域番号 |
20KK0255
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
土谷 智史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30437884)
|
研究分担者 |
土肥 良一郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00817786)
溝口 聡 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (20816706)
渡邉 洋之助 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30457551)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
|
キーワード | 肺再生 / 生理的刺激 / 肺胞バリア機能 / 移植 / バイオリアクター |
研究実績の概要 |
本事業は“臓器として機能する再生肺”の創出を目指す。臓器再生/移植医療分野では、臓器を丸ごと“脱細胞化”し、残った組織骨格を鋳型に自己の細胞を用いて組織を再構成する“再細胞化”による臓器再生が注目されている。我々はYale大学との共同研究により同手法を用いた再生肺の創出に取組んできた。しかし、創出された再生肺は構造的には未熟であり、短時間で呼吸機能は廃絶してしまう。その原因は、毛細血管内の血栓形成と肺胞バリア機能の破綻と考えられる。これに対し我々は、独自に血管壁バリア機能と肺胞上皮バリア機能を強化する手法を開発した。本研究では発生学的見地から、“適度な生理的刺激”という新たな因子に着目し、以下の①~⑤を目標とする。 ①Yale大学が開発したバイオリアクターを活用して呼吸運動などの生理的刺激の肺再生への影響を解明する。②肺胞バリア機能、毛細血管の血液灌流を維持できる生理的刺激の最適条件を見出す。③再生肺の動物での移植実験・機能評価を行い、我々の脱細胞化-再細胞化技術を完成させる。④前臨床試験を視野に入れ、ヒトサイズのブタ肺再生を試みる。⑤若手研究者が計画に参画し、国際共同研究の中心的役割を果す。 2020年度は、肺胞バリア機能をin vitroで探索した。Transwellを使用して脂肪由来幹細胞と骨髄由来幹細胞の肺胞バリア機能強化能を比較したところ、有意に脂肪由来幹細胞のバリア機能強化能が高かった。そのため、以降は脂肪由来幹細胞を使った肺胞バリア機能評価を行った。まず透過性試験を蛍光色素であるfluoresceinを用いて行い、脂肪由来幹細胞との共培養によって、肺胞上皮細胞の透過性は有意に低下した。また免疫染色を行うと、細胞間接着に関与するZo-1の蛍光免疫染色は、脂肪由来幹細胞共培養によって、有意に増加した。また、網羅的遺伝子解析によって、この肺胞バリア機能の増加は、Claudin familyを介して行われることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当施設において、脱細胞化組織骨格内での血管再生に続き、肺胞上皮の再生を行っているが、肺胞細胞の生着率が低いため、生理機能を測定するまでの成熟度を達成していない。受け入れ側のYale大学は、COVID-19のため一時的に研究が停止しており、日本からの受け入れも現在は行われていない。
|
今後の研究の推進方策 |
脱細胞化組織骨格のコーティングを工夫して、細胞の生着を促す。また、受け入れが可能になれば、すぐに渡米できるように手続きを進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行により、米国での研究が始まっていないため、次年度使用が発生した。繰越額は令和3年度にYale大学で行う以下の生理的刺激の研究に充てる予定である。 ①血管内のShear stressとして、拍動性の灌流や定常性の灌流を加える。 ②呼吸刺激として気道内に陰圧呼吸、陽圧呼吸などの異なった呼吸刺激を加える。
|