研究課題/領域番号 |
20KK0257
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大林 武 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50397048)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | 遺伝子共発現ネットワーク / 短期進化 / 進化圧 |
研究実績の概要 |
異質倍数体はゲノム配列の種内バリエーションを単一個体に取り込み、遺伝子の新しい組み合わせを探索することで、新規の環境へ適応するという短期進化の重要な戦略である。異質倍数体を通じた短期進化の鍵は、遺伝子ネットワークの再編であり、本研究ではこれを遺伝子共発現ネットワークを用いてネットワーク再編と進化圧の関係を解き明かす。まず、遺伝子共発現ネットワークの種内バリエーションを理解するため、親ゲノムにおける遺伝子ネットワークの特徴づけを行った。シロイヌナズナの標準種を基準として、亜種における遺伝子発現を解析したところ、基本的に標準種における環境応答と類似していることがわかった。すなわち、非標準種の遺伝子発現は、標準種とは環境応答の強度が異なる一方で、環境応答の方向性は大方同じであることを示唆している。一方、非標準種との進化的距離の影響については不明であり、引き続き検討が必要である。これと並行して、異質倍数体ゲノムの再編を可視化する方法を検討した。異質倍数体ゲノムには、複数の亜種に由来する遺伝子セットが混在しており、新しい共発現関係が構築されていると推定される。そのためホメオログ関係を念頭にオーソロググループを共発現ネットワーク上で可視化すれば、共発現関係の再編成を直感的に理解できる。個別の事例について検討したところ、この可視化により遺伝子重複後の新機能獲得を明確に検出できることがわかった。網羅的な検討を行うために、任意の共発現モジュールについて、ホメオログ関係を描画するツールの開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡航にあたり、新型コロナウイルス感染症(オミクロン株)の影響を受けたものの、当初予定と比較して1週間程度の短縮に留まり、おおむね順調に進展しているといえる。感染症対策のため、対面での議論についてはある程度制限があったものの、大学機能は大方通常通りであった。訪問中のラボだけでなく、研究所のセミナーでの発表を通じて進化生態学系研究室と広く交流を行い、特に理論的な枠組みについて議論をする機会に恵まれた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の2ヶ月の渡航成果を踏まえて、2022年度には5ヶ月の渡航を予定している。遺伝子ネットワーク解析のみならず、進化圧の解析についても実施する計画である。
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