研究実績の概要 |
異質倍数体はゲノム配列の種内バリエーションを一つの個体に取り込み、遺伝子の新しい組み合わせを探索することで、新規の環境への適応を可能にする植物の広く見られる短期進化の重要な戦略である。本研究では遺伝子共発現解析を通じて、この遺伝子の新しい組み合わせの出現とその機能を解明する。 重要な穀物であるコムギは、異質6倍体(AABBDD)の特徴を持つ。同質倍数体ゲノムではサブゲノム単位の制御が示唆されているが、異質倍数体におけるサブゲノム単位の制御の存在やその効果は明確でない。公共リポジトリに登録されているRNAseqデータを用いてコムギの全遺伝子ペアの遺伝子共発現関係を導出した結果、多くの遺伝子共発現モジュールがサブゲノムA, B, Dにまたがっている一方で、少なくとも一部の共発現モジュールは特定のサブゲノムの遺伝子のみで構成されていることが示された。 並行して、植物を文化進化の観点から解析する手法を構築した。同一の生物に対して異なる言語で異なる呼び名が存在するが、文化的な接触に基づく語彙の伝播により、呼び名は言語を超えた類似性の構造を持つ。これまでに哺乳類を対象に、呼び名の通言語的な類似性構造からその生物種の起源(野生の生息域)とそこからの語彙の伝播の歴史を考察してきた。今年度は食用植物を含む有用植物について、呼び名から伝播の歴史を考察した結果、これらの植物においてもその起源と伝播の歴史を追跡できることが示唆された。
|