本研究は、基課題で取り組んでいる土壌有機炭素の蓄積・分解を制御するメカニズムの解明を、同じく有機物を構成する鉱物吸着態有機窒素(Mineral Associated Organic Nitrogen: MAON)の蓄積形態と微生物によるその利用の理解へと発展させ、土壌中のMAONの微生物による利用様式を明らかにすることを目的として行った。最終年度には、有機態窒素を吸着する土壌粘土鉱物の分布について、その規定因子をインドネシア火山帯およびカメルーン火山帯において明らかにした。いずれの地域においても気温と降水量および年間の降水の分布が、土壌粘土鉱物の分布に強く影響していた。インドネシア火山帯の土壌については、乾季の乾燥の強さが非結晶鉱物および結晶性鉱物の種類に重要な役割を果たしていた。また、カメルーン火山帯については、非結晶鉱物の分布に対する温度と風化強度の影響を分けることに成功した。さらに、インドネシア火山帯の土壌について、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析による有機物の分析を行い、気候が非結晶鉱物を通して有機物の性質に強く影響していることを明らかにした。前年度に明らかにした非結晶鉱物への有機態窒素吸着が、微生物による有機窒素の利用性を制御していることも含め、研究期間全体を通じて、気候-土壌粘土鉱物-微生物による有機窒素の利用様式の間にある関係を明らかにし、微生物による有機窒素の利用が気候によって異なることを示した。
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