研究課題/領域番号 |
20KK0263
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小林 秀樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), グループリーダー代理 (10392961)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | 北方林 / 永久凍土 / 温室効果ガスフラックス / 土壌動態 / 北極域温暖化 |
研究実績の概要 |
2021年度は、研究計画調書に記載のとおり、2022年度に予定している共同研究先(アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター)における共同研究推進に向けた準備期間となっていた。このため、次年度からの本格調査に向けた過去のデータの入手と予備解析を中心に進めた。航空機のデータについては、これまで収集していた過去の観測サイト周辺(アラスカ大学フェアバンクス校地球物理学研究所ポーカーフラットリサーチレンジ、以後PFRRサイト)のハイパースペクトル画像に加えて、航空写真を収集した。収集した航空写真には、アラスカ内陸地に広く分布する非常に疎な常緑針葉樹(クロトウヒ)の樹木一本一本の分布が記録されている。この写真データからクロトウヒの分布(位置)やその樹冠の広がりに関する情報の抽出を試みた。PFRRサイト内の観測値で樹木が比較的疎なエリアと密なエリアについてそれぞれ50m×50mの地域を抽出し、写真のRGB(赤、緑、青)の色情報の強度で閾値を調整し、樹冠情報を抽出することができた。さらに、写真上に写る樹木の影と観測時間の情報を組み合わせて、影の長さから樹高の推定を試みた。この解析によって得られた解析エリアの樹木位置、樹冠エリアと樹高の情報を2014年8月に現地計測によって得られたデータと比較した。ここでは現地で計測した木本数と樹高の情報(航空写真の解析エリア内の30m x 30m)と航空機データによるそれらの推定値の比較を行い、航空写真から推定された樹木数及び樹高ともに過小推定であった。しかし、校正係数として樹高に1.5のファクタを乗じることで、現場観測値に近い樹高頻度分布を再現できることが明らかとなった。この解析結果については2022年度の現地調査で現地の樹木を確認して評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、2022年度以降の本格調査に向けた予備調査・準備期間と位置づけていた。この準備には、現地での視察などを行うための短期訪問が計画されていたものの、COVID-19の蔓延に伴う海外渡航の制限により現地での予備調査と打ち合わせを実施することができなかった。また、当初計画されていた現地観測サイト(PFRR)周辺での航空観測も中止となった。現地での予備調査が実施できなくなったことにより、調査ポイントの選定などを実施することができなかった。以上の理由により、現在までの進捗はやや遅れ気味の状況である。その一方で、打ち合わせについては、オンラインでの会合で代用することができた。その一方で、研究実績の概要に記載の通り、データの収集と解析については、進展があった。特に、現地の常緑針葉樹(クロトウヒ)の樹木数や樹高など、森林景観を特徴づけるパラメータが航空写真から推定できたことは大きな成果であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本国際共同研究は、2021年度にCOVID-19による海外渡航の制限で活動に一定の制約がでたものの、2022年度の現地長期滞在はほぼ予定通り実施する予定である(ただし、当初予定していた2022年4月からの現地訪問は間に合わず5月開始となる見込みである。)。また、本報告書執筆時点において、NASAのプロジェクトからは、観測サイト(PFRR)上空で航空機観測を7月下旬ころに実施する予定であるとの情報を得ている。このため、現地訪問後、速やかに現地サイトの視察を行い航空機データの具体的な解析方針や現地調査方法を決定する予定である。現時点では、研究の進捗に若干の遅れはあるものの、当初予定通り、現地との共同研究を継続する。ただし、2021年度の遅れの影響により航空機データの解析に遅れが生じた場合には、最終年度である2023年度の研究実施内容(帰国後の衛星データやモデルを用いた地域スケールへの展開)については、衛星データの解析のみに注力するなど、当初の予定から若干目標を修正して対応することも検討する。
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