学校の学習形態が多様化している今日において,他のグループの会話音や隣の教室からの活動音等が雑音となって,児童生徒のコミュニケーション活動に影響を及ぼす可能性が指摘されている。雑音下での聴取成績の低下が見られずとも,正確に聞き取るために多くの労力を要する児童生徒の存在も指摘され,これらの負担はListening Effortと呼ばれている。本研究は児童生徒のListening Effortを評価する手法を開発し,Listening Effortを軽減するための手法についても検討を行うことで,児童生徒の活発なコミュニケーション活動を支えるための包括的な支援のあり方について提言することを目的とした。 Listening effortに関する研究や,雑音下での音声聴取に関する研究について,先駆的な取り組みをしているデンマーク工科大学のHearing systemsにて1年間客員研究員として従事しながら,上記内容の研究に取り組んだ。研究を進める中で,Listening effortを扱った研究はその研究対象が成人の聴覚障害者であり,小児例を対象とした際にはそれらの知見が必ずしも適応できないことが改めて示唆され,特に実験室以外での小児のlistening effortを計測する手段が求められていることが明らかとなった。これらの状況を踏まえ,スマートアイグラスを活用し,学習時やコミュニケーション活動の瞬目数の変化に着目することで,小児のlistening effortを客観的に評価し得る可能性について検討した。具体的には,雑音下聴取時の瞬目数の変化に関する基礎実験や,教育実践場面での実践研究を行った。研究成果は国内で開催された学会やシンポジウム,また申請者が自主企画したオンデマンドプログラム等で日本国内に広く周知した。
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