研究課題/領域番号 |
20KK0301
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
柴田 洋二郎 中京大学, 法学部, 教授 (90400473)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | 不安定雇用層の主体性 / 持続的な社会的包摂 / 職業訓練 |
研究実績の概要 |
本研究では、不安定雇用層の主体性を雇用能力の向上につなげる制度の日仏比較から、この層が就労により自立し、持続的な社会的包摂に至るための法制度の構築を目指す。具体的には、職業訓練を労働者の権利の観点から考察し、また、労働者が主導して活用する職業訓練の受講を促進する制度も考察する。 2021年度は、不安定雇用層のうち「パートタイム労働者(学生アルバイトも含む)」と(「雇用」関係ではない)不安定就労層である自営的就労者について、社会保障法・労働法の観点から考察した。日本の社会保障制度は、いわゆる正社員を中心に構築されたため、非正社員や非被用者(自営的就労者等の自営業者)のための制度は発展しておらず、結果として「正社員と非正社員」、「被用者と非被用者」との間に社会保障制度上、大きな格差が生じる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて政府が講じた政策には、この格差を浮き彫りにするものがあったが、他方で、この格差の是正・見直しにつながりうるものもあった。 「被用者と非被用者」について、EUでは、コロナ禍以前から自営業者に対する社会保障の適用が大きな課題となっており、労災保険や失業保険といった雇用労働者向けの制度を個人事業主にも適用することを(法的拘束力はない勧告という形式ではあるが)求めている。日本の法制の参考にするため、この動きを引き続き注視する必要がある。 また、雇用維持のための助成金(例えば雇用保険の雇用調整助成金)により、既存企業の雇用を維持する政策だけでなく、失業者に対する就業支援も重視し、労働移動を促進することが求められる。その際には、失業者が新たな業種に挑戦できるよう、政府は職業訓練を支援する等中長期的な支援を強化する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、6か月以上の渡航により国際共同研究を行うこととなっている。国際共同研究という点では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続くなかで、海外共同研究者との連絡・連携が十分でないため、「やや遅れている」と評価する。 他方で、研究代表者自身で進められる研究については進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年秋より予定しているフランスへの長期渡航に向けて、国際共同研究の準備を進める。具体的には、1.職業訓練の実践、2.職業訓練の法制度、3.職業訓練を促進・サポートする法制度について、渡航に先立ち、関連文献(日本およびフランスに関するもの)の読解を行って情報の整理・制度を再確認する作業を行う。
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