研究課題/領域番号 |
20KK0302
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
豊田 祐輔 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (00706616)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | 地域防災知 / 知識抽出 / ゲーミフィケーション / ゲーミング・シミュレーション / フォーカス・グループ・ディスカッション / 防災学習 / タイ |
研究実績の概要 |
本研究は三つの課題から構成されており、2022年度は第1課題ならびに第2課題を実施した。 第1課題はゲームを通じた地域防災知の手法の評価である。世界保健機関(WHO)のセーフ・コミュニティに認定されたタイ北部に位置するナーン県ナーン市の中でもコミュニティ防災のモデルとなっている地域コミュニティAを対象として、ゲーミフィケーションを利用して地域防災知を収集した。本ゲームは、参加者が2011年大洪水の前・中・後に実施した活動について、カードを選択もしくは記述していく手法で、競争的要素と挑戦的要素、そして協働的要素を含むものである。地域知収集の主な手法であるフォーカス・グループ・ディスカッションとの比較を通じて、より多くの地域文脈に関わる知識を収集できること、タイ国内の他のコミュニティと比較してより多くの特異(先進的)な知識を収集できること、さらに、ソーシャル・ラーニングの創発に必要な参加者間のコミュニケーションをより促進できることを示すことで、開発したゲームの有用性を示した。 第2課題では、上記ゲームで収集した防災地域知を学習できるゲーミング・シミュレーション(GS)を開発し、地域コミュニティAに隣接する別の地域コミュニティBや大学生などを対象に実施することで、短期的な学習効果を確認した。このGSも構成は似ており、洪水前・中・後に自身が与えられた役割(市長、コミュニティ・リーダー、コミュニティ役員、コミュニティ・メンバー)に基づいて、どのような活動をするかをカードに記入してもらうものである。その後、地域コミュニティAで実践されていた特長的な考慮事項を踏まえているかどうか確認し、点数化した。さらに本ゲームを再度実施することで、1回目と2回目の点数を比較し、短期学習効果とともに参加者が真剣に取り組んだことが確認でき、本GSの妥当性を示した。今後は分析を進めていくこととしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り第1課題ならびに第2課題の調査を実施することができた。また、第3課題へ向けたコミュニティとの調整や所属大学の研究倫理審査委員会への申請も進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、地域コミュニティBにおいて防災活動実施前と後の比較調査をすることで、特に防災文化の転換や包括的地域防災力の向上程度を評価し、第3研究課題の研究を取りまとめる。以上の3課題を通じて、モデルコミュニティからの特長的な地域防災知の収集(第1課題)、その地域防災知の学習手法の開発・実践(第2課題)、さらに防災活動実施による防災文化の転換による包括的地域防災力の向上評価(第3課題)という一連の関与方策の評価を行い、今後のコミュニティ防災政策への実践的な知見を提示する。
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