研究代表者は基課題の研究過程で、ミラーチルトによる偏心コマ収差の変化を、独自に開発した光学設計法で大域的に評価した結果、2面の球面ミラーに特定の大チルトを与えた斜入射配置(入射角>60deg.)において、コマ収差がキャンセルし、1次元(メリジオナル)面内で、ほぼ無収差で集光できる新規解を見出した。本研究では、基課題で申請者が開発した軟X線用ミラー光学系の大域的な収差最適化技術に、仏国Institut d'Optiqueの Delmotteグループの持つ、高エネルギー領域用の斜入射多層膜ミラー開発の知見を組み合わせることで、光子エネルギー200-700eV領域に適用できる新たな結像・集光光学系を開発する。 2面球面ミラーにチルト偏心を与えた際に生じる偏心コマ収差を、解析的・数値的に求めるソフトウエアを開発し、結像光学系の光学設計解を得た。その研究の過程で、ミラーに60deg.を超える大きなチルトを与えた斜入射配置を解析したころ、曲率半径と入射角を特定の条件とすると、各々のミラーで生じるコマ収差がキャンセルし、1次元(メリジオナル)面内で、ほぼ無収差で集光できる複数の新設計を見出した。この発見が、本国際共同研究で開発する斜入射多層膜ミラー光学系の着想につながった。新規解は、①作製が容易な球面ミラーで、②斜入射多層膜ミラーによる高い反射率や波長選択性を利用でき、2次元結像に拡張すれば、高スループット・高開口数と低収差を両立した新しい軟X線光学系として期待できる。本研究では、球面ミラー新規解をさらに発展させ、200-700eVの軟X線領域で、100nm以下の空間分解能を実現する斜入射多層膜ミラーを開発する。このため、今年度は予備検討で見出した1次元集光の新規解もとに、軸上および軸外収差の補正を両立する新規解を大域的に探索した。その結果、軸外収差を低減する2種の設計解を見出した。
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