研究課題/領域番号 |
20KK0315
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大洞 光司 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10631202)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | 人工酵素 / 生体触媒 / 物質変換 / 反応場 / 金属ポルフィリノイド |
研究実績の概要 |
研究者のグループで実験に従事し、疎水性空孔タンパク質の独自技術を習得することで研究の飛躍的な加速が期待される。 触媒反応の高活性・高選択性の制御は現在の低分子モデル錯体のみを用いた錯体化学や分子触媒の化学では達成困難であり、金属酵素で巧みに用いられているタンパク質マトリクス(反応場)の寄与の重要性が示唆されている。しかし、タンパク質から構成される反応場を自在に設計・改変して活性種を制御し、目的の機能を発揮する人工金属酵素を創出した例は非常に限定的であり活性の高いRh等の貴金属を使った数例が報告されているに過ぎない。基課題を含めた本研究では、より安価な金属であるMnやFeで、タンパク質の反応場を精密に制御し、困難な反応を立体・位置選択的に進行させる点で非常に大きな意義がある。本国際共同研究では、基課題において開発する人工金属酵素の設計、調製手法を、海外共同研究者独自の疎水性空孔タンパク質に適用し、新しい高活性・高選択的な人工金属酵素の開発に取り組み、飛躍的な発展を狙う。 本年度は、日本側で人工金属酵素の金属錯体の調製を実施し、それを渡航先であるオランダに持ち込み、予備的な実験を実施した。残念ながら有意な活性を示さなかったが、今後の人工金属酵素設計に向けた方針を決めることができた。また受け入れ先の海外共同研究者やそのグループメンバーと綿密なディスカッションを行い、来年度以降の渡航に向けた準備も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究者のグループで実験に従事し、疎水性空孔タンパク質の独自技術を習得することで研究の飛躍的な加速が期待される。 触媒反応の高活性・高選択性の制御は現在の低分子モデル錯体のみを用いた錯体化学や分子触媒の化学では達成困難であり、金属酵素で巧みに用いられているタンパク質マトリクス(反応場)の寄与の重要性が示唆されている。しかし、タンパク質から構成される反応場を自在に設計・改変して活性種を制御し、目的の機能を発揮する人工金属酵素を創出した例は非常に限定的であり活性の高いRh等の貴金属を使った数例が報告されているに過ぎない。基課題を含めた本研究では、より安価な金属であるMnやFeで、タンパク質の反応場を精密に制御し、困難な反応を立体・位置選択的に進行させる点で非常に大きな意義がある。本国際共同研究では、基課題において開発する人工金属酵素の設計、調製手法を、海外共同研究者独自の疎水性空孔タンパク質に適用し、新しい高活性・高選択的な人工金属酵素の開発に取り組み、飛躍的な発展を狙う。 本年度は、日本側で人工金属酵素の金属錯体の調製を実施し、それを渡航先であるオランダに持ち込み、予備的な実験を実施した。残念ながら熱力学的な安定性が低く、有意な活性を示さなかったが、今後の人工金属酵素設計に向けた方針を決めることができた。また受け入れ先の海外共同研究者やそのグループメンバーと綿密なディスカッションを行い、来年度以降の渡航に向けた準備も行った。コロナ禍ということもあり、当初の予定より滞在期間を短くしたため遅れが生じた。来年度以降は、より滞在期間を長くし、研究が円滑に進むよう努める。
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今後の研究の推進方策 |
基課題では、難度の高い物質変換反応に触媒活性を示す人工金属酵素の開発を目的とし、ヘムタンパク質と人工金属錯体を組み合わせた系を構築している。今年度は実際に渡航し、疎水性空孔を有する非ヘムタンパク質であるLmrRに調製した金属錯体を取り込ませ基課題で提案している人工金属酵素の合理的設計の拡張にトライした。しかしながら、新たに調製した人工金属酵素は、難度の高いC-H結合活性化反応に有意な活性を示さなかった。金属錯体が安定に取り込まれていないことが主な原因と考えられる。今後はさらなる金属錯体の探索とタンパク質の変異導入の双方からより安定に存在できる人工金属酵素が必要であると予想される。したがって、分子動力学計算を用いて予備的に評価しながら変異体を設計し、実際にタンパク質に挿入して、評価を進めたい。軸配位子を導入することが難しいことが原因と考えられるので、より平面性の高い金属錯体で疎水性の相互作用をうまく使える分子設計が必要と考えられる。また超分子的な複合化が難しい場合は、共有結合を用いてタンパク質に金属錯体を固定化する手法も検討したい。来年度はより長い期間滞在し、タンパク質への変異導入による最適化を進めたい。これに向けて、十分な種類、量の金属錯体を調製する。反応の評価に関してもC-H結合の水酸化やアミノ化が進行しやすい基質を調製するなどしたい。得られた成果は積極的に国際学会や学術論文として発表する。
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