多様な新電子機能を実現する材料の候補の一つとして、半導体ナノ材料の研究が進められている。本課題では、「電界効果トランジスタ構造化でキャリア密度を電気的に制御する技術」と「半導体ナノ材料の形状およびサイズを制御する技術」を組み合わせた研究を行うことにより、基課題の研究計画を発展させる。また本課題は、研究代表者がドイツに滞在し(期間は令和4年6月から令和5年5月)、国際共同研究として遂行した。 令和5年度のドイツ滞在中(令和5年4月-5月)は、CdSe及びCuZnInSeのナノ結晶の研究を進展させた。スピンコート法によりナノ結晶の薄膜を作製し、電気特性の評価を行った。リガンド交換やスピンコートの最適な条件を調べ、数10nmから100nm程度の厚みの薄膜を作製した。さらに、それぞれの材料から薄膜トランジスタを作製したところ、n型およびp型動作を示すこと、電界効果によりキャリアを注入することに成功した。また、帰国後も日本で実験を継続するため、上記2種類の材料を含むナノ結晶試料の合成を行った。これらの試料の測定は、本課題の終了後も、共同研究として継続し発展させる。 日本に帰国後は、研究を継続するために研究代表者の実験室の整備を行った。半導体ナノ結晶は大気中で不安定であり、酸素や水分への暴露で劣化する。そのため、グローブボックス中の嫌気性雰囲気下で薄膜作製やトランジスタ作製、物性評価を行う実験環境を整備した。今後は電界効果トランジスタの作製と熱電特性の精密評価を、渡航先の研究機関と連携しながら進めてゆく。
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