研究課題/領域番号 |
20KK0325
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
渡邉 貴一 岡山大学, 自然科学学域, 研究准教授 (60743979)
|
研究期間 (年度) |
2021 – 2023
|
キーワード | Poly(ionic liquid) / Ion gel / SANS / Rheology / Polyelectrolyte |
研究実績の概要 |
ナノ粒子と高分子イオン液体をネットワークとする高強度イオンゲルは、高性能な二酸化炭素分離膜や過酷条件で作動するアクチュエーターなどへの応用が期待される。本研究では、海外共同研究者の開発した流動場における中性子線散乱手法やレオロジー測定技術を駆使してイオンゲル内のミクロなネットワーク構造を明らかにし、高強度化に寄与する因子を解明することを目的としている。2022年度は、海外共同研究先に滞在し、イオンゲルのレオロジー測定、高分子イオン液体溶液の静的・動的光散乱、小角X線・中性子線散乱実験を実施することによって、イオンゲルの架橋ネットワーク構造やイオンゲルのゲル化過程の物性変化を評価した。 興味深い結果として、粘度測定および中性子線散乱実験結果より、通常の装置では測定困難な高分子イオン液体の分子量測定に成功した。また、イオン液体中でイオン液体系モノマーを重合すると、通常の有機溶媒では得られないほど高重合度の高分子が生成されることが明らかになった。 小角中性子線散乱から、架橋剤濃度の異なるイオンゲルのネットワーク構造を推定したところ、ハイドロゲルと同様に、架橋剤濃度の増加に伴って、ゲルの網目構造が微細化する傾向が見られた。また、アニオン種の異なる高分子イオン液体系イオンゲルを開発し、それらのレオロジー測定をしたところ、溶媒となるイオン液体種と高分子イオン液体のアニオン種の組み合わせがイオンゲルの力学特性に大きく影響することが示唆された。この結果より、溶媒とイオン液体モノマー種の組み合わせを適切に設計することで、イオンゲルの力学特性を大きく変えられることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レオロジーや散乱光を利用したイオンゲルの構造解析を当初の計画通りに進められているため。
|
今後の研究の推進方策 |
明らかになってきた高分子イオン液体の特異な高分子電解質としての溶液物性に関する実験結果をまとめて、論文に投稿する。引き続き、高分子イオン液体ゲルに関する散乱実験およびレオロジー評価を進めて、高分子イオン液体ゲルの高強度化因子を明らかにする。
|