研究課題/領域番号 |
20KK0334
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
塩見 康博 立命館大学, 理工学部, 教授 (40422993)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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キーワード | データ駆動型モデル / 交通シミュレーション / 強化学習 / 信号制御 / クラウドソーシングゲーム / エッジコンピューティング |
研究実績の概要 |
本研究では、高速道路や都市内ネットワークを対象に、都市交通システムのデジタルツインを構築し、その上でシミュレーション上でシステム最適化のための施策を検討するツールを構築するものである。研究内容は大きく、i)人・クルマの挙動モデルの構築、ii)都市交通シミュレーションの構築、およびiii)その制御アルゴリズムの検討に分類される。 まず、iについては、都市高速を対象とした車両走行軌跡データを用いて車線変更を含む車両挙動の詳細な分析と大規模データに基づくデータドリブン型の車両挙動モデルの構築に取り組んだ。加えて、歩行者を対象とし、光刺激を付与した環境での歩行速度決定モデルの構築を行った。 ii)については、データドリブン型の車両挙動モデルを用いた交通流シミュレーションの構築に取り組んだ。利用するモデルはBehavior Cloningの一種であり、一定程度の非線形な交通現象の再現性の確認はできたものの、その挙動は不安定であり、その改善が課題となっている。また、南草津駅から立命館大学間の道路ネットワークのシミュレーションモデルを構築し、プローブデータに基づくODの推定や現況再現性の検討を行った。 iii)については、まずは高速道路を対象として、リアルタイムに取得されるデータから可変制限速度を最適運用するアルゴリズムを深層強化学習を用いて構築した。また、一般道路ネットワークの交差点において、信号制御をコントロールするゲームをを構築し、ゲームのスコア向上による現状改善の可能性を検討した。加えて、道路ネットワーク上で公共交通優先信号システムのアルゴリズムを構築し、その有効性をシミュレーション上で確認した。 上記すべてに関わる基礎技術開発として、ドライブレコーダーから周辺車両・歩行者を検知するエッジシステムの開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機材準備の遅れにより1年、研究期間を延長したが、周辺技術開発は順調に進んでおり、2024年度中には所定の成果を達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、交通流シミュレーションを主軸として、リアルタイムのデータ観測との融合、動的かつ介入的な交通マネジメントの効率化の検討を行う予定である。具体的には、単眼カメラから周辺車両や歩行者、自転車の存在座標を検知するエッジシステムを開発し、実際に運用しているバスに設置、その推定精度の検証を行う。加えて、より広範なオンラインデータの取得に向けて、CCTVなどのライブストリーミングデータを解析し、交通需要や車両挙動、信号制御ログなどのデータに変換する手法の開発を行う。 これらの、取得したデータを道路ネットワークの交通シミュレーションのリアルタイムの入力値として設定し、シミュレーションを逐次的にキャリブレーション、短期間の将来予測を行うモデルの構築を行う。とりわけ、広域なプローブデータを用いたオンラインでのOD交通量の推計手法についても検討を行う。このシミュレーションをベースとして、公共交通優先信号制御システムの開発を行うとともに、動的な信号制御をゲームとして再現し、クラウドソーシングゲームによる改善案の探索可能性についても検討を行う予定である。 高速道路のマネジメントに関しては、走光型視線誘導灯の影響下でのデータ駆動型車両挙動モデルの構築を行うとともに、そのモデルに基づく走光型視線誘導灯の最適運用方策について、深層強化学習などを援用したアルゴリズム開発を行う。データ駆動型車両挙動モデルに基づくシミュレーションの開発にあたっては、Dataset Aggregation (DAgger)の援用を検討している。その他、可変制限速度制御アルゴリズムの開発に関して、より柔軟かつ現実的なデータ収集環境やコネクティッド車両などの混在状況を考慮した深層強化学習手法の構築を目指す。
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