研究課題/領域番号 |
20KK0340
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 北斗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30610935)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | Amborella trichopoda / Arabidopsis thaliana / Evo-Devo / RNA-seq / ゲノム / インフォマティクス / 進化発生学 / 葉 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、陸上植物において葉の獲得を可能にした分子機構を世界に先駆けて明らかにしようとする基研究を、渡航先のUniversity of California, Davisでさらに発展させるものである。応募者は、これまでその詳細が全くの謎であった葉の獲得を可能にした分子機構を、進化学的観点から複数の植物群を選択し、分子生物学的手法、インフォマティクスなどを駆使して、この課題の理解を進める計画である。 これまでの解析で、現存する被子植物の系統樹上で最基部に位置し、単葉を形成するアンボレラ(Amborella trichopoda)とシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の葉原基からのRNA-seqデータをを比較し、これら2種の葉原基の遺伝子発現プロファイルは、系統的に離れた2種であっても、その基本的な部分に関しては類似していることが示唆された。そこで2022年度は、その発生プログラムが陸上植物の系統樹上でどこまで遡ることができるかを検討した。具体的には、Phylostratigraphic analysisという方法で、葉の発生に関わる遺伝子群の獲得時期を推定した。これにより、アンボレラやシロイヌナズナが含まれる被子植物の葉の発生に関わる遺伝子群は、陸上植物の基部系統の時点でその多くが獲得されていることが示唆された。また、被子植物以外にも、コケ植物や、小葉類、裸子植物などに見られる側生葉状器官についても同様の解析を行ない、それぞれの系統における葉の獲得とその進化過程についても新たな知見を得るべく解析を進めた。以上の解析は、University of California, Davis のNeelima Sinha教授との議論のもと進められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、前年までに行なった単葉を形成するアンボレラ(Amborella trichopoda)とシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の葉原基からのRNA-seqデータを用いて、葉の発生に関わる遺伝子群を同定し、それらの遺伝子群の獲得時期を推定するためのPhylostratigraphic analysisを行なった。これにより、被子植物の葉の発生に関わる遺伝子群の進化に関して、重要な知見を得ることができた。加えて、同様の解析を陸上植物の様々な系統群のゲノムデータやRNA-seqデータを用いて行ない、陸上植物における葉の進化過程を理解するための基盤ができたため、進捗状況は、(2)おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、陸上植物の様々な系統にわたる複数の植物種を用いて、葉の発生に関係する遺伝子群の獲得時期を推定するためのPhylostratigraphic analysisを行なった。この中で、いくつかの系統においては、葉の発生に関わる遺伝子群の獲得時期が類似していることを示唆するデータを得ている。そこで 今後は、それらがどれくらい類似しているのかを葉の発生に関わることが明らかになっている主要な転写因子などに着目し、より詳細に比較を行なうことで、それぞれの系統で獲得された葉が、同様のメカニズムで獲得されたものであるかを、インフォマティクスなどを用いて解析する予定である。
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