研究課題/領域番号 |
20KK0346
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 貢士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20420226)
|
研究期間 (年度) |
2021 – 2023
|
キーワード | 作物生長モデル / 地下水位推定 / 農業被害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は地下水位情報および微地形を作物生長モデルに組み込むことによってコメ収穫量や農業被害額の推定精度がどの程度向上するかを明らかにすることである。モデル構築については現在、タイ国全土におけるコメ収穫量と収穫面積を5㎞メッシュ解像度で計算可能な分布型水・作物生長モデルを構築してきている。2100年までの将来気候予測値を用いて、タイ全土および地方別の農業被害額の推計を行った。またモデルの検証データの取得に関しては、2022年度はコロナによる渡航規制が緩和され、共同研究者との合同現地調査を実施することができた。具体的にはタイ東北部の天水田稲作地域において、2022年5月に気象観測器を設置する圃場の選定を行い、農業用水需要を計算するために必要な日射・気温・湿度・風速・降水量・地下水位データなどについて8月より連続観測を開始した。続いて、電磁地盤探査を行うための計測線を設定し、約600m×4測線について12月に比抵抗観測を行うとともに、ドローン測量による微地形計測、また同測線上において土壌水分・土壌塩分濃度の観測を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では2021年度より観測体制を整備し、現段階で既に2年間分のデータが集積されているはずであったが、コロナによる影響で気象観測の開始が2022年8月に、地盤比抵抗観測が12月に遅延したため、全体的な研究の進度はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
現地観測については2023年7月にデータ回収を行い、約1年間のデータをもとに地下水位変動と地形の関係性をモデル化するとともにコメの生育に作用する水ストレスへの寄与度を推計する予定である。また、先行してモデル構築を進めることにより、計算結果に影響の大きい要因を特定し、その項目について集中的に観測を行うことにより、効率的に検証データの取得を進めたいと考えている。特に、水田の立地条件が地下水位や下方浸透量の大きさに及ぼす影響が大きいと判断され、現地の土地利用や地形情報を統括している土地開発局との連携を強化する。農業被害額推計については各県における推定結果から地域ごとのリスク発生頻度を検討すると共に、現地農家のアンケート結果をもとに世帯収入に対する影響度を評価する。
|