感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)は疫学的によく知られた病態であるが、PI-IBSにおける腸管生理および遺伝子的な変化は知られていない。さらに、一般にIBSにおける生理機能変化に対する分子的な決定要因に関する知見は限られている。そこで、PI-IBSにおける消化管生理機能、大腸トランスクリプトーム、および糞便メタボロームの関係を明らかにするため研究を行った。ローマ基準で診断されたPI-IBS患者およびheakthy volunteersに対して腸透過性検査・シンチグラフィー・barostatなどの腸管機能検査を行い、また、糞便メタボローム解析・生検検体についてRNAseq解析を行った。PI-IBSの生理学的特性は、遠位大腸の透過性亢進を示していた。L-ウロビリンなどの代謝物の減少や便の回数との逆相関は、ビリルビン脱共役の障害やPI-IBSにおける高いタンパク質分解活性というこれまでの知見と一致し、さらに、ニコチン酸の代謝経路は、高い腸管透過性と関連していた。一方で腹痛などの症状と生理機能変化・糞便メタボローム・生検検体での遺伝学的変化に強い関連は見いだせなかった。 機能性ディスペプシアと消化管運動異常症(胃不全麻痺:Gastroparesis)の脳腸循環と腸管生理機能を中心とする病態差、さらに鑑別診断についてのreviewを報告した(Gastro Hep Advances 2022)。
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