近年、筋収縮は従来のカルシウムイオンだけでなく、ミオシンの形状変化も筋収縮を制御していることが提唱された。安静時にはミオシンヘッドはミオシンフィラメントに沿って寝ているような形になっているため、仮にカルシウムイオンが放出されてアクチンフィラメント側がミオシンヘッドと相互作用可能な状態になっても、ミオシンヘッドは物理的にアクチンフィラメントとは結合できないが、収縮時には、ミオシンヘッドがミオシンフィラメントから離れて立ち上がるような形になり、アクチンとの相互作用が可能になるというものである。本研究では、反動動作による筋力増強という作用が、反動動作(伸張性収縮)による大きなメカニカルストレスによって多くのミオシンヘッドがアクチンと相互作用可能な状態になり、これが大きな筋力発揮に繋がっているのではないかと仮説を立て、ミオシンヘッド(ミオシン制御軽鎖)に方位情報を含む蛍光標識をつけることで、伸張性収縮中のミオシンヘッドの角度変化を計測した。その結果、伸張性収縮を加えると、ミオシンヘッドの角度が大きくなる (立ち上がる) 傾向が確認された。つまり、反動動作を使うと、より多くのミオシンヘッドがアクチンと結合できる状態になることで、大きな筋力発揮に繋がっていることが示唆された。
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