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2021 年度 実施状況報告書

自然リンパ球を制御する細菌叢と活性化・抑制をコントロールするPD-1の役割解明

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0360
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

佐藤 尚子 (高山尚子)  国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 専任研究員 (90732446)

研究期間 (年度) 2021 – 2023
キーワード自然リンパ球 / 細菌叢 / 疾患制御
研究実績の概要

自然リンパ球(Innate lymphoid cells: ILC)は、細胞の分化と機能により1~3型の大きく3つに分類される(NK細胞などを加えた場合は5つ)。ILCが持つユニークな機能と疾患との関わりにより、今なお世界的に競争が熾烈である。本研究課題は、この3つのILCについて申請者が近年報告した胃での役割だけでなく、腸管などにおける疾患との関係性について国際共同研究としてフランス・パスツール研究所のDr. James Di Santoと共に進める計画であった。しかしながら、2020年からの世界的なCOVID19のパンデミックにより、申請者が所属する研究機関において海外渡航禁止令が発令され国外での研究活動が実質不可能になった。そこで、共同研究先のパスツール研究所では解析が必要になる遺伝子変異マウスのコロニー拡大と必要な遺伝子欠損を得るための掛け合わせを依頼した。同時に日本においては、漢方投与がどの様なメカニズムで炎症性腸疾患の制御に関与するかについてILCを制御する細菌叢に着目し解析を行った。
漢方は奈良時代に中国から日本に伝えられた伝統医学をもとに日本の風土に合った独自の発展を遂げ、現在ではさまざまな疾患の予防・治療に用いられている。漢方は、一般的に薬局で購入できる身近な医薬品の一つであるが、実際に臨床の現場でも広く使用されており、特に、「大建中湯」は消化管疾患の予防・治療のほかに、大腸がん手術後の腸閉塞予防や、炎症性腸疾患および集中治療中の患者の胃腸の働きを助ける目的でも使用されている。しかしながら、これまで医療従事者が大建中湯の効能を実感することはあっても、その作用メカニズムはほとんど明らかになっていなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

クローン病などで知られる炎症性腸疾患は国の難病指定を受けている疾患であり、日本でも4万人以上の患者が存在し現在ではさらに増加の一途を辿っている消化管特異的な疾患である。この炎症性腸疾患の原因として遺伝的背景や環境による外的要因だけでなく、食事の欧米化による腸内フローラの影響も指摘されているが、詳細は未だ明らかとなっていない。またこの様な腸管での環境改善に漢方が臨床でも使用されており、特に「大建中湯」は大腸がん手術後の腸閉塞や炎症性腸疾患患者にも広く処方されている。しかしながら、漢方が腸管においてどの様なメカニズムで炎症性腸疾患を改善しているかはほとんど明らかとなっていなかった。本研究の一環として日本においては自然リンパ球に着目し、腸内細菌叢との関係性について解析を行った。
まず実験動物であるC57BL/6マウスにデキストラン硫酸ナトリウム塩(DSS)を経口にて自然飲水させると大腸特異的に強い炎症が誘導される。このマウスに予め漢方「大建中湯」を通常エサと共に投与すると大腸炎が軽減した。この時、マウスの大腸においてLactobacillusが増加し、この細菌の増加に伴い代謝物であるプロピオン酸の増加も確認された。次に大腸における免疫細胞を解析したところ、自然リンパ球のうち3型自然リンパ球(ILC3)が健康なマウスの大腸と同数に維持されており、ILC3とLactobacillusの関係性を示唆する結果を得た。そこでILC3上に発現している代謝物受容体を解析したところ特異的に代謝物受容体であるGPR43の発現が上昇しており、Lactobacillusにより代謝されたプロピオン酸がILC3上のGPR43を介してILC3の活性化に関与していることが明らかとなった。この研究結果はFrontiers in Immunology上にて報告することができた。

今後の研究の推進方策

2022年度に入り、世界的なCOVID19のパンデミックもある程度の見通しがたち、日本においてもワクチンの投与を行っている事を前提として渡航制限が緩和されはじめた。そこで、今年度中に渡航しフランス・パスツール研究所にて研究を行うことを予定している。解析は申請書に記載されているとおり、細菌叢が関与するILC制御について胃のILC解析を主に、様々な臓器を対象として行う予定である。訪問先のJames Di Santoとはすでにオンラインによるミーティングを行い、実験計画についての打ち合わせを行った。一般的に遺伝子欠損マウスはその遺伝的背景と影響によりマウスの維持が困難な事が多い。申請者が必要とする遺伝子欠損マウスも解析に使用できる匹数が確保できておらず、引き続きマウスの維持と掛け合わせを依頼している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A Japanese herbal formula, Daikenchuto, alleviates experimental colitis by reshaping microbial profiles and enhancing group 3 innate lymphoid cells2022

    • 著者名/発表者名
      Zhengzhen Shi, Tadashi Takeuchi, Yumiko Nakanishi, Tamotsu Kato, Katharina Beck, Ritsu Nagata, Tomoko Kageyama, Ayumi Ito, Hiroshi Ohno and Naoko Satoh-Takayama
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Interaction of innate lymphoid cells and bacteria - important mediator for the host defense -2021

    • 著者名/発表者名
      Naoko Satoh-Takayama
    • 学会等名
      日本免疫学会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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