研究課題/領域番号 |
20KK0373
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐久間 一基 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (70791721)
|
研究期間 (年度) |
2021 – 2023
|
キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 糖尿病 / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における肝鉄蓄積とインスリン抵抗性増大を結びつけるメカニズムを、肝代謝フラックス解析システムを用いて解明することである。FDXRは肝鉄蓄積抑制、ミトコンドリア機能制御作用を認めることから、①鉄蓄積に伴う酸化ストレスを軽減②ヘム・鉄硫黄クラスターの有効利用によるミトコンドリア代謝フラックスの変化がFDXRノックダウンや過剰発現でもたらされることが想定される。これらのメカニズムを明らかにするために、共同研究者のYale大学Gerald Shulman教授が精通している肝代謝フラックス解析によって、肝鉄蓄積が糖代謝、脂肪酸合成、脂肪酸β酸化、ケトン合成に影響を及ぼす作用点を統合解析することを計画した。 AAV8-TBG-FDXRをマウス尾静脈より投与して、FDXRの肝臓特異的過剰発現を行い、PINTA(positional isotopomer nuclear magnetic resonance tracer analysis)解析を行った。マウスに[3-13C]Lactate, [3-3H]Glucose 持続静注を行い、肝臓における各種代謝産物(標識/非標識)を測定し、TCA回路を担うクエン酸合成酵素(Vcs)と糖新生を担うピルビン酸カルボキシラーゼ(Vpc)のフラックス解析を行った。FDXR過剰発現マウスは、コントロール群と比較して、Vpc/Vcs比の低下、Vcsの上昇を認め、FDXRがmitochondrial oxidationを増加させることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Gerald Shulman教授のラボとの共同研究は、FDXRの肝臓における肝鉄蓄積抑制、ミトコンドリア機能制御に伴う代謝フラックス変化を捉えることができ、研究を推進できている。
|
今後の研究の推進方策 |
AAV8-TBG-FDXRによる肝臓特異的FDXR過剰発現マウスに加えて、GalNAC修飾したアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)による肝臓特異的FDXRノックダウンマウスの構築を行っている。良好なノックダウン効果が確認されており、同マウスモデルを用いて、ブドウ糖負荷試験、ピルビン酸負荷試験、グルコースクランプ試験で、耐糖能、糖新生、インスリン抵抗性を評価する。加えて、下記肝代謝フラックス解析を行う。 肝代謝フラックス解析: 肝糖脂質代謝は、転写因子を介する代謝酵素の発現量調節、リン酸化修飾による酵素活性の調節(グリコーゲンシンターゼ、AMPKなど)、中間代謝産物によるアロステリック作用(アセチルCoAによるピルビン酸カルボキシラーゼ活性化、グルコース6リン酸によるグリコーゲンシンターゼ活性化など)が連動して制御している。LC/MS/MSを用いた肝臓での脂質プロファイルの同定とPINTA(positional isotopomer nuclear magnetic resonance tracer analysis)を用いて、肝特異的FDXRノックダウンマウスの解析を行う。 LC/MS/MSを用いた肝臓での脂質プロファイルの同定:肝インスリン抵抗性に関わるジアシルグリセロール、セラミド蓄積の有無、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性化による糖新生亢進をきたすアセチルCoA量を評価する。
|