研究課題
本研究の目的は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)におけるFDXRの役割について肝代謝フラックス解析システムを用いて、解明することである。GalNAC修飾したアンチセンスオリゴヌクレオチドによる肝臓特異的FDXRノックダウンマウスを用いて、アスパラギン酸代謝フラックス解析を行った。マウスに[13C5]aspartateと [3-3H]Glucose の持続静注を行い、肝臓における各種代謝産物(標識/非標識コハク酸、リンゴ酸、ピルビン酸)を測定し、コハク酸デヒドロゲナーゼの前向き/後ろ向きフラックス比(Vsdhr/Vsdhf)、ピルビン酸サイクル(Vpyr cycle)/ピルビン酸カルボキシラーゼ(Vpc)比を計算した。2022年度に行った [13C5]glutamineと [3-3H]Glucose の持続静注によるグルタミン酸代謝フラックス解析の結果と統合解析を行い、TCA回路を構成する酵素のフラックスを同定した。FDXRノックダウンマウスは、コントロール群と比較して、TCA回路を構成するコハク酸デヒドロゲナーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、オキソグルタレートデヒドロゲナーゼのフラックス低下を認めた。これらの結果は、FDXRが生体において、ミトコンドリア機能制御を果たすことを示した新たな知見である。一般に、単純性脂肪肝では、基質の上昇、ATP需要の上昇を代償するためにTCA回路のフラックスは亢進するのに対して、病態が進展し非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に至るとミトコンドリア機能の低下により、TCA回路フラックスは低下し、脂肪肝の悪化や酸化ストレスが亢進し、NASHの病態進展に関わると考えられている。FDXRノックダウンは、ミトコンドリアTCA回路フラックスの低下を介して、NASHの病態進展に関わることが考えられる。
すべて 2023 2021
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 120 ページ: -
10.1073/pnas.2312666120
Communications Biology
巻: 6 ページ: -
10.1038/s42003-023-05160-y