基研究において、胸部レントゲン写真からどのような血行動態指標が予測可能かを明らかにするため、胸部X線写真から非侵襲的に右心カテーテル検査の複数の測定値を予測する人工知能(深層学習モデル)を開発し、胸部X線写真からどのような血行動態指標が予測できるか検討した。右心カテーテル検査を施行された成人約900名を対象とし、胸部レントゲン写真から様々な血行動態指標を予測する人工知能モデルを開発し、その予測精度を検討した。胸部レントゲン写真から予測できる血行動態指標に有意な傾向がみられた(平均肺動脈楔入圧、平均肺動脈圧、平均右房圧、右室収縮期圧については、人工知能による予測値は実測値と中等度の相関(相関係数 0.49~0.63)を示した一方、流量や抵抗を示す心係数と肺血管抵抗は予測値と実測値に相関を認めなかった)。本成果については2022年度中に報告、発表する予定である。 また胸部レントゲン写真からの血行動態指標予測精度の向上のため、複数の胸部レントゲン写真の公開大規模データベースを事前に学習した基盤モデルの開発を開始した。小児における肺炎の診断において、胸部レントゲン写真を事前に学習したモデルは、ImageNetを事前に学習したモデルに比べて短時間で学習を行うことができ、精度も向上することが示された。詳細は2022年度中に報告、発表する予定である。 このほか、胸部レントゲン写真を用いた先天性心疾患の診断や、血行動態評価に関する研究を継続している。 国際共同研究としては、2022年度中の渡航を予定しており、これまでに必要な機器の選定、購入、データの準備などを行った。高性能deep learning用サーバーを設置し、大規模な人工知能の学習に対応できる環境を構築し、また渡航に向け各種手続きや、日本における研究環境の整備を行った。
|