研究課題/領域番号 |
21000001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 邦雄 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (10242166)
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キーワード | 二重ベータ崩壊 / ニュートリノ / 素粒子実験 / 極低放射能環境 / レプトン数の破れ |
研究概要 |
a)当初予定の累計200kgを大幅に上回り430kgという世界最大量の90%濃縮Xe136を実現した。 b)スーパークリーンルーム内でのミニバルーン製作を完了した。 c)小型の液中カメラと照明を製作した。 d)新開発の液中カメラ・照明を活用し、スーパークリーンルームで製作したミニバルーンをカムランド内に導入し、さらに330kgの濃縮キセノンをミニバルーン内に導入することに成功した。 e)ThO_2Wを使用した2.6MeVのγ線の較正用線源を製作し、新たに準備した較正用ポートからカムランド内に導入することで、解析ソフトウェアの全体的な較正を行った。 f)Xe136のニュートリノを伴う二重ベータ崩壊を世界最大統計で測定し、半減期2.38±0.02(統計)±0.14(系統)×10^<21>年を得た。これにより過去の複数の実験間で生じていた5倍以上の矛盾に決着をつけた。また、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊に対してもこれまでの下限値を5倍改善する半減期5.7×10^<24>年以上(90%信頼度)という下限値を得ることに成功し、ニュートリノ有効質量に換算して0.3~0.6電子ボルト以下という世界最高感度を実現した。 g)更なる高感度化のためにキセノンを加圧して導入することを考案し、カムランド中心の圧力に相当する、1.85気圧でキセノンを溶かした際に、周囲のカムランド液体シンチレータと密度・光量がバランスする液体シンチレータの開発に成功した。 以上に加えて、カムランド検出器で並行して反電子ニュートリノの研究を行い、素粒子・地球物理・天文のそれぞれで新たな知見を得た。特に地球ニュートリノの観測では、放射性物質起源の地熱生成は地表での地熱流の半分程度であることをニュートリノ観測によって解明し、原始の熱が残存し地球が徐々に冷えているという地球物理の根幹となる概念を独立した手法で検証することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画を約1年前倒しして進行しており、なおかつ当初目標を超える同位体濃縮キセノンを確保できている。既に観測が開始され、激しい競争の中で世界最高レベルの結果を発表しており、今後の改善点も明確になっている。
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今後の研究の推進方策 |
福島原発由来の放射性セシウムの他、放射性の銀またはビスマスといったニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊信号に近いバックグラウンドが微量であるが観測されており、これが観測感度を向上する上での障害となっている。これは同時にこのバックグラウンドを除去すれば期待通りの感度を実現できることも示している。これまでキセノンガスを純化する装置を有していなかったが、H24年度には、キセノンガス用の蒸留塔・活性炭・3nmフィルター・ゲッターを導入しキセノンガスの純化を行う。同時にキセノンガスの増量も行うことで、大幅に感度を向上し、過去の実験が主張するニュートリノレス二重ベータ崩壊の検証を行い、さらに高感度を必要とする逆階層構造についても幅広い領域で検証を行う。
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