研究概要 |
本研究では有機触媒の性能に応じて、高性能有機塩基触媒、高性能有機酸触媒、高性能有機酸塩基複合触媒、高性能有機ラジカル触媒という四つの研究項目に分けて、高性能有機触媒の合理的なデザインを目指すとともに、これら高性能有機触媒を駆使して精密有機合成反応を開拓する。まず新規キラル相間移動触媒として、触媒骨格に水素結合能を有する水酸基を組み込んだ二官能性キラル相間移動触媒を新たに開発し、不斉フッ素化反応およびオキシインドール誘導体の不斉共役付加反応の開発に成功した。また、エナミン形成による基質の活性化を利用する二級アミン触媒として、嵩高いジフェニルトリメチルシロキシメチル基によって精密に不斉場が構築された触媒を新たに開発し、従来型の触媒では困難であったアルデヒドの高エナンチオ選択的α-酸素化や不斉α-臭素化反応を開発した。続いて、光学活性ビナフチルジカルボン酸触媒では、さらなる精密な触媒設計を行ない、(1)ビニロガスアザエナミンを用いる不斉アルケニル化反応、(2)C,N-環状アゾメチンイミンを用いた逆電子要請型不斉1,3-双極子付加環化反応、(3)シアン化物を用いないStrecker型生成物の触媒的不斉合成法の開発に成功した。また触媒量の低減化にも取り組み、反応(3)においてはわずか0.1mol%の触媒量で高収率・高立体選択的反応を達成した。エナミン経由型の交差アルドール反応において、グリオキシル酸エステルの反応では高いシン選択性を得ることが困難であるが、アミノスルホンアミド触媒を用い、基質の適切な修飾により、完全なシン選択性の獲得に成功した。六員環キラル有機二官能性触媒開発においては、環上の置換基による反応性及び選択性への影響が精査され、不斉マンニッヒ反応において高収率・高立体選択性を得ることに成功した。有機ラジカル触媒の研究では,今のところ満足のいく結果は得られていない。
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