研究課題
大脳樹状突起スパインシナプスの研究を継続し以下の進展を得た。1)スパイン収縮について懸案であったGABAがなぜいるのか、なぜ、グルタミン酸刺激を弱くしてはいけないかについては、細胞内にカルシウムバッファーを注入したところ、遅いバッファーは適切な濃度ではGABAの作用を模倣するのに、速いバッファーは可塑性を阻害するので、グルタミン酸受容体の作るカルシウムドメインが可塑性誘発に必須であるという結論に達した。結局、GABAはグルタミン酸受容体の活性化が保ったまま、バルクのカルシウム濃度を落とすので有効なので、カルシウムさえ押さえられていればGABAは必須でない。この様な事実は、これまでGABAの必要性に関する論争に終止符を打つものである。2)学習したスパインのみを標識するプローブの開発に成功していたが、その原理的な面と行動実験を進めた。原理的には樹状突起で合成された蛋白質は自由なので、増大したスパインに入りやすいという明白な理由が考えられた。実際、タンパク質は事前に作られている必要がある。行動実験については、同数のスパインの照射でも学習依存性がなく標識した場合には記憶が消去されないこと、また、スパインが標識されている間しか記憶が消去されないことなどが固まった。また、記憶に関連するシナプスのラベルを丹念に数えた所、16%の細胞で発現していて、各細胞では200個以上のスパインが標識されていることがわかった。少数の細胞に沢山のシナプスができるというセルアッセンブリモデルが支持されたことになる。3)開口放出プローブについては、終末活性化領域では多くのSNAREがtrans-SNAREを作っていること、その他の部位ではcomplexはほとんどcis-SNAREであることが明らかになった。こうして、シナプス前部の機能を読み出すプローブが構築された。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題は、以前の課題を引き継ぐというより、新規なテーマに新しい方法論で取り組むことを企画した。従って、技術的な克服のために時間がかかるのはやむをえない。しかしながら、提案したすべての項目について、現在、大きな成果を上げつつある。
これまでの進展を受けて、特にシナプス前FRETプローブについて、長期的可塑性の追跡をスライス標本及び個体で推進する。また、記憶スパインを標識するプローブについて、様々の改良を進め、記憶回路の可視化につなげる。更に、学習時の可塑性の可視化も進め、学習記憶時の大脳回路可塑性の全体像に迫る研究を推進する。
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