体細胞が増殖分裂する過程で、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられる。一方、生殖細胞で精子や卵子を形成するときに見られる染色体を半分に減らす分裂は減数分裂と呼ばれ、体細胞の分裂と明確に区別され、複製された染色体の動原体は、一旦は同じ方向からのスピンドル微小管によって捕らえられ、同じ方向へ分配される。今回、酵母を用いた研究で、減数分裂のときは2つの染色体の動原体の中に埋もれたDNAを染色体の「糊」のタンパク質コヒーシンが接着することにより、その結果、動原体が同じ方向に向くように規定されていることを証明した。さらに体細胞分裂では、動原体部分のコヒーシンを積極的に不活性化し、その代わりに側近領域でコヒーシンが染色体DNAの接着を維持することにより、動原体が反対方向へ向くように仕向けられていることも明らかにした(Nature 2009)。 全ての真核生物に保存されたCENP-Cは動原体の機能に本質的な役割をもつが、実際の分子機能については不明であった。我々は分裂酵母の研究より、動原体と微小管の正しい結合に必要なFtalやPcslといったタンパク質が、CENP-Cを足場として動原体に局在することを明らかにした。さらに減数分裂では、CENP-Cは一方向性の動原体構築に必要とされるMoalを特異的に動原体へリクルートし、減数第一分裂の還元分配を制御していることを明らかにした。今回の発見により、CENP-Cの本質的な機能が明らかになっただけでなく、体細胞分裂と減数分裂の動原体の違いを生み出すメカニズムの一端が明らかになった(Dev Cell2009)。
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