研究課題
特別推進研究
細胞の染色体は遺伝情報を担うことで知られている。体細胞の染色体分配のときに、複製された染色体のコピーが2つの娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要である。オーロラキナーゼ複合体は動原体の商のセントロメアという場所に局在し、微小管と動原体の結合部位をリン酸化することにより、間違った結合を修正する働きがある。このように、セントロメアは染色体が正しく分配されるために必須の機能を果たしている染色体上の場所として古くから知られていたが、その形成機構は今まで分かっていなかった。今回の研究により、セントロメアは染色体上に広く存在するヒストン複合体のリン酸化によって決まることが明らかになった。すなわち、オーロラキナーゼ複合体が、シュゴシンというタンパク質と協調して、ヒストン複合体の構成因子であるH2AとH3の特異的なアミノ酸のリン酸化を直接認識してセントロメアに局在することを突き止めた。また、この2つのピストンのリン酸化は、動原体に局在するBub1キナーゼと、染色体ペアの接着部位に局在するHaspinキナーゼによって担われており、これらのリン酸化が空間的に交わった部位にセントロメアが形成されることを意味する。また、分裂期特異的にオーロラキナーゼ複合体がCDK1キナーゼにリン酸化されることによりシュゴシンと結合できることも示した。酵母とヒトの細胞の解析から、これらの機構は保存された機構であることを証明した。本研究は、染色体のセントロメアという場が時空間的にどのように規定されるかという生物学の根本的な問題を解いた(Science 2010.Nature 2010)。
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