研究課題
特別推進研究
生殖細胞の染色体分配は、減数分裂という特殊な様式によって染色体ゲノムを半分にする。とくに減数第一分裂で、相同染色体の間で組み換えが起きることが、染色体が正しく分かれるために必須の役割をもつが、その分子メカニズムについては解明されていなかった。セントロメアに局在するオーロラキナーゼは、動原体と微小管の間違った結合を不安定化することにより正しい結合を促進する働きがあり、相同染色体の間の組み換えによる物理的結合(キアズマ)は、動原体とスピンドル微小管の結合に応じて相同染色体の間の張力を生み出す。本研究では、この張力の発生によって相同染色体のセントロメアのオーロラキナーゼの局在が変化し、その結果、動原体と微小管の正しい結合が安定化されることを見出した。これにより、長い間謎であった減数分裂組み換えのもつ染色体分配における意義が、分子レベルで解明された(Dev Cell 2011)。コンデンシンは、染色体を凝縮させる働きをするタンパク質である。本研究では、コンデンシンが染色体中央部の動原体に局在することによってコンパクトな動原体の構造を構築し、スピンドル微小管が正しく染色体を捕らえることを保証していることを明らかにした。また、コンデンシンが染色体DNA上に均一に存在するヒストン複合体の一つのタンパク質H2Aを足場に局在することを発見し、オーロラキナーゼによるコンデンシンのリン酸化によってH2Aとの結合が促進されることを明らかにした。さらに、染色体の分離が起きるときには、オーロラキナーゼが動原体の近くから染色体腕部近傍に移動することにより、コンデンシンによる適時的な染色体凝縮、それにともなう染色体の分離を実現していることを明らかにした(Nature 2011)。本研究により、染色体の形と分離の動的制御について根本的な理解が得られた。
2: おおむね順調に進展している
いくつかの研究は計画以上に進展したが、分裂酵母の減数分裂過程のPlo1の基質の決定は遅れている。
昨年度は、セントロメアに局在したPlo1キナーゼが、セントロメアのRec8をリン酸化することを明らかにしたので、次年度はその生理学的な意義をより明確にする。マウス精巣からCENP-Cと結合するタンパク質を検索した結果、生殖細胞特異的な発現を示すタンパク質MEICENPを同定できている。昨年度に作製したノックアウトマウス(不完全であるが部分的な表現型を示す)の解析を詳細に行う。さらに、新たに作製している完全破壊マウスの解析も、作製でき次第進める。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 10件) 備考 (1件)
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http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/watanabe-lab/watanabe_lab/Home.html