研究概要 |
我々は昨年度までに、網羅的遺伝情報と臨床情報を統合するためのバイオインフォマティクスの手法を確立してきた。23年度はこの手法をもとに順調に研究をすすめた。まず、粘膜下浸潤胃がんのゲノム異常を網羅的に解析し、早期のリンパ節転移に関わるゲノム異常を同定した(PLoS One 6e 22313)。大腸癌のリンパ節転移予測マーカーとしてVSNL1の発現亢進が有効であることを報告した(Int J Can 2011)。また、消化管間葉系腫瘍のメチル化を網羅的に解析し、予後と相関するメチル化異常を明らかにした(GUT 61(3), 392)。確立したバイオインフォマティクス手法を用いて腎細胞癌についての解析にも着手し、腎細胞癌の癌関連マイクロRNAを同定した(J Pathol, 224,280-8)。High-grade腎細胞がんにおけるSAV1異常発現の意義を明らかにした(BMC cancer, 11, 523)。ほとんど解明が進んでいない透析腎癌の亜型分類をゲノムプロファイルをもとに行った(Cancer Sci, 103, 5659)。さらに、臨床試験を行うことで様々な組み合わせの抗がん剤の効果を解析した(J Oncol Pract, 7(3), 148-154 ; Cancer Chemother Pharmacol, 64(3), 557-64 ; Gastric Cancer, 14(3), 226-33 ; Int J Cancer, 15 ; 130(10) ; 2359-65)。 本研究において我々は網羅的遺伝情報と臨床情報を統合するため、バイオインフォマティクス手法を開発し、その成果を報告した。今後は同定された分子標的の臨床応用へ向けた研究を進めるとともに、開発したバイオインフォマティクス手法を用いて他の癌腫における分子標的のスクリーニングに着手したいと考えている。
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