研究課題/領域番号 |
21200003
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古賀 靖子 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (60225399)
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研究分担者 |
高雄 元晴 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (90408013)
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キーワード | 建築環境・設備 / 生理学 / 視覚 / ipRGC / 概日リズム / 網膜神経節細胞 / 瞳孔反射 / 錐体 |
研究概要 |
瞳孔反射測定、生物時計の中枢である視交叉上核や覚醒に関係する青斑核の光応答に関する免疫組織化学的実験の結果より、非イメージ形成の視覚の分光感度は、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の分光感度と錐体の分光感度との合成により得られることが示唆された。460nm付近にピークを持つ単峰性のメラトニン分泌抑制の作用スペクトルと異なり、視覚応答から得られる分光感度曲線は二峰性になると考える。これは、ピーク波長は異なるが、詳細に求めた明所視の比視感度が二峰性であることと類似している。 光環境が注意度に及ぼす影響を調べるため、マウスについて聴覚性驚愕刺激によるプレパルス抑制試験を行った。その結果、480nm付近の単色光環境下で、他の波長の光環境条件や暗黒条件に比べ、抑制率が有意に向上した。ipRGCは、480nm付近に最も高い分光感度を有することから、プレパルス抑制に関わる神経核に、ipRGCからの間接的なシナプス入力が存在し、聴覚刺激のゲーティング機構の調節に関わっていることが示唆された。この結果は、ipRGCを効率的に刺激する照明環境が、注意機能の向上に寄与する可能性を示したもので、光環境デザインへの応用において、神経科学的エビデンスになると考える。 作業面の明るさは一定だが、空間の明るさや光色が異なる条件で、オフィスの執務室を想定した照明環境実験を行った。覚醒度を高めるとされる高色温度光環境は、生理指標、心理指標に関して必ずしも良い評価を得られるものではなく、まぶしさ感や作業後の視覚疲労に影響することが示唆された。さらに、本研究の成果を屋内照明関連の規格作成に反映させるため、その嗜矢として国内外の屋内照明基準の歴史的変遷を調べ、現行の屋内照明基準の問題点を指摘した。
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