研究概要 |
リボザイム(RNA酵素)の発見により,原始生命はリボ核酸(RNA)を中心として構成されていたとする「RNAワールド仮説」が提案された.さらにRNAの試験管内分子進化法が登場し,様々なリボザイムを創成できることが示された.しかし従来法では,鋳型DNAやポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの生物由来の素材と手法が必要である.従って,このようなRNAがダーウィン進化的に出現する仕組みがあったかどうかは,原始的な素材を用いて検証しなければならない.本研究では,原始地球上に存在したと考えられる非生物的な素材を用いてRNAの進化的な発展過程を明らかにすることを目的として,以下について検討した.すなわち,RNA分子の集合体からRNAワールドにダーウィン進化的に発展したならば,(1)RNAが自発的に生成する過程,(2)RNAが複製する過程,(3)RNAが増幅する過程,(4)RNAが自然選択する過程,が必要である.本研究では,それぞれの過程が効率よく進む条件を探索し,それらを結合して最終的にRNAがダーゥイン進化的に創成されるシステムを構築することを目標とした.その結果,(1)について,粘土鉱物を触媒としてRNAが非生物的に生成する過程では,ランダムな配列で4種のヌクレオチドを含むRNAが生成することを確かめた.(4)については,高温下での熱による淘汰圧によって熱に強いRNAが生き残った可能性があることが分かった.(2)および(3)についてはDNA鋳型も酵素も存在しない前生物的な複製を可能とするために,種々の検討を試みた.残念ながら現時点ではRNAが複製する条件は見いだせなかったが,その可能性を見いだすことができた.
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