研究概要 |
タンパク質の立体構造形成過程(フォールディング)の仕組みを明らかにするために,本研究では4つの検討課題を設定した。検討課題1では,単一アミノ酸ポテンシャル力場の精度を検証する。検討課題2では,ペプチドの立体構造における単一アミノ酸ポテンシャルの役割を定量的に明らかにする。検討課題3では,単一アミノ酸ポテンシャルに基づいてタンパク質立体構造の歪みエネルギーを解析する。検討課題4では,ウェブにおいてシミュレーションプログラムの公開を行う。 平成21年度は,単一アミノ酸ポテンシャルを用いた生体分子シミュレーションシステムの開発を重点的に行い,これをほぼ完成させた。同時に,検討課題1,検討課題3,検討課題4についても検討を開始した。開発した生体分子シミュレーションシステムは,単一アミノ酸ポテンシャル力場(SAAP力場)を用いてペプチドのモンテカルロ分子シミュレーションを行うプログラム(A)と,SAAP力場とタンパク質構造データベース(PDB)の情報を用いてタンパク質中の各アミノ酸の歪みエネルギーを計算するプログラム(B)からなる。 検討課題1の検討では,力場パラメータに改良を加え,ペプチドの分子シミュレーションを行ってその精度を検証した。その結果,精度は多少向上したものの,さらなるパラメータの調整が必要であることが明らかになった。検討課題3では,RNase Aやcytochrome cなどのタンパク質中のアミノ酸の歪みエネルギーの解析を行い,2次構造やフォールディング過程との関連について検討を始めた。検討課題4では,現在公開中のSAAP力場のホームページを充実させると同時に,計算機サーバーを用いたシミュレーションサービスの提供に向けた準備を行った。次年度以降に研究を効率的に推進するための環境整備を計画通りに進めることができた。
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