本研究では、タンパク質の立体構造形成過程(フォールディング)の仕組みを明らかにするために、単一アミノ酸ポテンシャル(SAAP)を用いた新しい力場パラメータの開発とシミュレーションプログラムの作成を行っている。平成23年度は具体的な課題として、作成した単一アミノ酸ポテンシャル力場の精度を検証すること(検討課題1)、ペプチドの立体構造における単一アミノ酸ポテンシャルの役割を定量的に明らかにすること(検討課題2)、単一アミノ酸ポテンシャルに基づいてタンパク質立体構造の歪みエネルギーを解析すること(検討課題3)、ウェブにおいてシミュレーションプログラムの公開を行うこと(検討課題4)を計画した。このうち検討課題1において重要な研究成果を得ることができた。まず、ヘリックス構造をもつC-ペプチドのSAAP分子シミュレーションにおいてヘリックス構造が再現できることが分かった。一方、SAAP力場の精度を高めるために溶媒排除体積効果や分極効果の取り込みを行ったが、シニョリンを用いた検証において精度の改善は見られなかった。このことより、SAAPがペプチド鎖のコンホメーションの決定に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。今後は全てのアミノ酸のSAAPパラメータを完全ポテンシャル化することで、精度の更なる改善を図ることを計画している。検討課題2と3においては、これまでの研究成果を論文として公表するための作業を行った。検討課題4では、順次ホームページにおいてシミュレーションプログラムの公開を行っている。タンパク質立体構造を単一アミノ酸ポテンシャルという新しい切り口で解析することの重要性を示すことができた。
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