本研究計画の目的は、脳部位特異性が極めて高い新規遺伝子改変マウスの作製法を確立することである。そしてその先鞭として、2種類の遺伝子プロモーターを用いる事による扁桃体特異的な遺伝子改変マウスを作製し、その機能解析を行う。 平成22年度は、交付申請書に記載された予定どおり、まずmiRNA発現を用いた部位特異的遺伝子ノックダウンマウスのターゲット遺伝子であるNMDA受容体GluN1の発現解析を行った。リアルタイムPCR、in-situ hybridizationによる発現解析では、ターゲット遺伝子の目立った減少が確認されなかった。しかし、同じ扁桃体内でもInterneuronではノックダウンが起こっていないと予測され、それらの細胞が多く混じった状態で発現解析した為に、組織学的解析では遺伝子ノックダウンが目立たなかった可能性もある。その為、現在は扁桃体のNMDA応答の測定を計画しており、それによりターゲット遺伝子の機能発現をより直接的に計測してノックダウン効果を評価する予定である。 これと並行して、新たなsite-specific DNA recombinaseである、PhiC31o-attP/Bシステムを導入した、部位特異的遺伝子ノックアウトマウスの作製を進めている。Cre-loxPシステムと合わせて2つのrecombinaseを用い、その組み合わせにより脳部位特異性を高める計画である。平成22年度は、異なる分子生物学的手法を用いたトランスジェニックマウス2ラインを作製した。その結果、どちらのラインも生殖系列への挿入遺伝子の伝達が確認され、現在は導入遺伝子の発現解析を進行中である。 本研究計画は、哺乳類の脳各部位における遺伝子機能を解析する上で、将来的に重要な技術を提供するものである。既存の遺伝子改変・遺伝子導入マウスを上手に利用し、作製の為の負荷を軽減することも念頭に置いている。
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