研究課題
言語障害の原因遺伝子FOXP2の発見により進化におけるヒト言語獲得の分子機構の解析に分子生物学的手法が可能となった。本研究は進化の過程でヒトが獲得した言語能力の分子基盤の解明を目的とする。コミュニケーション手段としての音声言語は必ずしもヒトに固有のものではなく、生物言語にもその原型が存在する。ヒト言語障害の変異R553Hに対応する変異を導入したFoxp2(R552H)-KIマウスは小脳プルキンエ細胞の発達障害と超音波コミュニケーション(USV)障害を示す(Fujita, et al., PNAS 2008)。Foxp2(R552H)-KIマウス小脳にヒトFOXP2を発現させたTgマウスでは、一部USVが回復することから(Momoi投稿準備中)、Foxp2を介してのヒト言語と生物言語USVは共通の分子基盤が存在する。本研究はヒトマウス脳(大脳、小脳)での共通の分子基盤を解析し、進化の過程でヒトの言語獲得の分子機構の解明を目的とする。本年度は、USV障害と小脳プルキンエ細胞の発達障害との関係を明らかにするため、プルキンエ細胞にPcp2/L7プロモーターを用いて、ヒトFOXP2を発現させ、Foxp2(R552H)-KIマウスと交配することで、ヒトFOXP2を小脳プルキンエ細胞に発現するFoxp2(R552H)-KI-FOXP-cerebellum-Tgマウスを作製した。Tgマウスでは、部分的ながらUSVが回復することから、小脳がUSVと言語に関与する分子機構の一つであることを明らかにした(Momoi投稿準備中)。今後、FOXP2の結合蛋白や発現調節する遺伝子、リン酸化を解析し、言語とUSVの共通の分子基盤を解析し、ヒト言語獲得の分子機構の解明への突破口とする。
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