平成21年度は、PET用プローブ候補化合物について、in vitroでAmyloidβpeptide(Aβ)線維およびリン酸化されたタウタンパク質との結合親和性を評価した。また、アルツハイマー病患者脳病理標本で老人斑への結合性を染色性と蛍光顕微鏡によって評価した。さらにアルツハイマー病の動物モデルであるAPPトランスジェニックマウスおよびタウトランスジェニックマウスにプローブを静注し、脳内Aβ、タウの結合性を検証した。また、投与後の全身臓器への体内分布を算出し、投与後の被曝量を算出した[^<18>F]標識化合物に関しては、その標識合成法を確立した。 パイロジェン試験を3回実施し、陰性を確認し、標識薬剤の合成を行い、さらにマウスおよびラットにおけるプローブ用化合物の毒性試験を実施し、安全性を確認した。静脈内投与後7日間までの行動観察、体重測定を行い、7日目に剖検、体内臓器の病理組織学的検査を実施し、化合物の安全性に関しては問題ないことを確認した。安全性評価等に問題がなければ資料を揃え、探索的臨床研究実施をめざし学内の倫理委員会へ申請する予定である。もしプローブの安全性に問題が認められれば、さらにプローブの最適化を推し進める。平成22年度は最も優れたプローブを用いてヒトでPET撮像を行う予定である。本研究が実現化した暁には、アルツハイマー病の進行とタウの沈着の関連が明らかになり、今後の治療薬、治療法の開発、評価に大きく寄与するものと考える。
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