研究課題
自閉症血清中の脂質VLDL分画の特異的な低下が判明したことから、本計画では(1)自閉症者血清の脂肪酸解析、(2)脂肪酸代謝異常に基づく自閉症動物モデルの確立とそのイメージング解析、(3)動物モデルを用いた新規自閉症治療法の検討、(4)脂肪酸解析結果に基づく晴帯血出生コホートによる自閉症疫学研究、の検討を行っている。松崎は、昨年度に見出したヒト自閉症者同様の脂質プロファイル低下が認められるCD38KOマウスの検討を進め、例数を挙げた結果、血中のω6脂肪酸の低下を修復すると社会認識行動の修復につながることを見出した。ほかに3種の自閉症モデルマウスの検討を行ったが、同様の脂質プロファイルを示したものはなかった。現在、この所見をまとめて論文投稿の準備中である。財満は自閉症者血清のガスクロマトグラフ質量分析を行い、例数を挙げたところω6脂肪酸に加えてミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、オレイン酸、ドコサペンタエン酸の低下が自閉症者で認められ、VLDL分画の低下に有意な相関のある脂肪酸としてミリスチン酸、パルミチン酸、γ-リノレン酸、オレイン酸が見出された。この傾向は、上記の自閉症モデルマウスには認められなかった。現在、この所見をまとめて論文投稿の準備中である。岩田は既に作製したVLDL受容体過剰発現動物(VLDLR-Tgラット)の論文投稿準備を進めている。小川はVLDLR-Tgラットの脂肪酸PET撮像を進めるため、ω6脂肪酸のC-11標識化合物合成に取り組んでいたが、原因不明の合成失敗が続いており、現在条件を変更して撮像準備を進めている。
3: やや遅れている
研究費交付期間内に論文発表に至らなかったため
昨年度より採択された脳科学推進プログラム課題Fの補助を受けて研究を推進していく。マウスの研究によって、脂肪酸代謝とCD38および社会行動の関連が見出されたので、この点についてマウスだけでなくマーモセットなど霊長類モデルを用いて、そのメカニズムを明らかにする。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)
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