研究概要 |
糖尿病等の生活習慣病を起因とした眼疾患が増加傾向にあることから,眼底病変の早期発見や予防的治療法の開発が強く望まれている.疾患部位における定量診断や疾患メカニズムの解明のためには血糖値や酸素飽和度,たんぱく質といった網膜機能情報の直接評価が有効であると考えられる.中でも酸素飽和度は糖尿病網膜症などの眼底疾患との関連性があると言われており,さらに眼底疾患以外の脳や心臓の疾患の診断の指標値としても注目されている.本研究では,医・工・芸の3つの連携により次々世代の眼底機能計測法を開発することを目指している.平成21年度の研究成果は以下の通りである. 1) 分光イメージング眼底カメラの開発 ビームスプリッターと2台のCCDカメラを用いた2波長画像同時取得光学系を開発した.CCDカメラの手前に干渉フィルタを取り付けることで分光画像を取得できる.2波長画像を同時に取得することで眼球の固視微動の影響を除去することが可能となった.さらに,CCDカメラをEM-CCDカメラに置き換えることにより,ビデオレートで2波長分光イメージングが可能であることを確認した. 2) 画像処理を組み合わせた眼底網膜の酸素飽和度イメージング 取得した2波長画像に対して画像処理を施すことにより眼底網膜の2次元酸素飽和度マップを算出するモデルを構築した.その結果,網膜中心動静脈を指標値により識別可能であることを確認した.算出結果において指標値のばらつきが存在していたが,その原因が2画像のシフト補正・回転補正にあることを究明し,精度良く補正することで指標値のばらつきが低減されることを確認した.
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