研究概要 |
糖尿病等の生活習慣病を起因とした眼疾愚が増加傾向にあることから,眼底病変の早期発見や予防的治療法の開発が強く望まれている.疾患部位における定量診断や疾患メカニズムの解明のためには血糖値や酸素飽和度,たんぱく質といった網膜機能情報の直接評価が有効であると考えられる.中でも酸素飽和度は糖尿病網膜症などの眼底疾患との関連性があると言われており,さらに眼底疾患以外の脳や心臓の疾患の診断の指標値としても注目されている.本研究では,医・工・芸の3つの連携により次々世代の眼底機能計測法を開発することを目指している.平成22年度の研究成果は以下の通りである. 1)分光イメージング眼底カメラによる網膜酸素飽和度計測の信頼性調査 開発している分光イメージング眼底カメラに関して,眼底網膜中心血管の動静脈の識別の成果を挙げてきた.しかしながら,同一血管内において指標値のばらつきが存在することから,そのばらつきの原因や複数の被験者を観察した際の指標値の変化等を調査した.その結果,ばらつきの原因についてはカメラのショットノイズや画像処理におけるフィルタリングが影響していることが明らかになってきた.さらに,複数の被験者測定に関しては,指標値の領域の違いはあるものの,いずれの被験者についても動静脈の識別が可能であることが明らかになった. 2)高解像度分光イメージング装置の開発 現行の装置に比べて約60倍の高解像画像が撮影できる分光イメージング装置の開発を行なった.ビームスプリッターと2台の高解像CMOSカメラを用いた2波長画像同時取得光学系を開発した.CMOSカメラの手前に干渉フィルタを取り付けることで分光画像を取得できる.また,干渉フィルタの取り外しが可能な仕様にすることでカラー画像も撮影できるようにした,次年度は開発した装置を用いた解析を進める予定である.
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