研究概要 |
糖尿病等の生活習慣病を起因とした眼疾患が増加傾向にあることから,眼底病変の早期発見や予防的治療法の開発が強く望まれている.酸素飽和度は糖尿病網膜症などの眼底疾患との関連性があると言われており,本研究では医・工・芸の3つの連携により次々世代の眼底機能計測法を開発することを目指している.平成23年度の研究成果は以下の通りである. 1)眼底網膜酸素飽和度イメージング装置の高精度化 前年度に開発した高解像分光イメージング装置を用いて,眼底網膜の酸素飽和度計測を行なった.従来の装置に比べ60倍の解像度の改善があることから,より微細な網膜血管の検出が可能となり,明確な動静脈識別が可能となることを実証した.本研究で導入している画像処理(線集中度フィルタ)を高解像画像に施すことで,蛍光眼底造影法に匹敵するほどの血管観察が蛍光色素の投与なく可能となる点が大きな利点と言える。また,高解像化によって同一血管内における指標値のばらつきが2波長画像の重ね合わせの精度に大きく影響することも新たに明らかとなった. 2)眼底用極微弱生化学発光計測装置の開発および生体発光の検知実験 眼底網膜細胞の活動に伴い発生すると考えられる極微弱生化学発光の臨床計測への可能性について実験的検証を行なためにヒト生体からの極微弱生化学発光を検出可能な超高感度EM-CCDカメラを導入した装置を開発した.手の甲を対象に検出を試みたところ,極微弱生化学発光の検出に成功した.指先の爪の部分から特に強く発光しており,生体バイオフォトンの文献と一致する傾向が見られた.この結果を踏まえ,眼底からのバイオフォトン計測を試みた.その結果,背景ノイズに比べて瞼を開いて通常に瞬きを行なう状態で撮影した場合の方が,輝度値の平均値が高い結果となった.したがって,本研究において初めて眼底網膜からのバイオフォトン検知の可能性が見出された.
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