超並列シーケンス多様性解析によって特定される「鍵種」について、ヌクレオシドトレーサー法を用いた動態解析を行った。研究船「みらい」の航海に乗船し、基質添加とBrdU標識による増殖応答実験を行った。超並列シーケンス多様性解析によって特定された「優占種」についての動態解析を行うため、配列データ及び、データベース検索により、特異的なDNAプローブのデザインを行った。また、相模湾時系列観測を実施し、季節変動を把握するための試料の採集を行った。超並列シーケンスでは、一回の分析で数十万塩基分のデータが得られ、生データの精度検証や低品質データの除去、数万タイプの塩基配列情報についての相同性検索や各種条件を変えたグルーピングを行う必要がある。これらの多量のデータを処理するための自動処理システムについて検討し、Mothurプラットフォームを用いた配列トリミング、品質チェック、クラスタリングといった処理フローの構築を行った。一連の解析によって、全リードの0.01%以下しか検出されない稀少種でありながら、BrdU標識画分では0.1%以上を占める増殖の早いOTUの存在が明らかとなってきた。こうした細菌種は、ウイルスや原生生物による溶菌、捕食によって、その現存量が常に低く抑えられており、ゆえにこれまでモニターされてこなかった。しかし、活発な増殖と高い溶菌、捕食率は、生態系内における物質フローへの高い貢献度を意味しており、新たな「鍵種」を見出したことになる。
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