研究概要 |
西部北太平洋亜寒帯域(K2;北緯47度、東経160度)および亜熱帯域(S1;北緯30度、東経145度)の2測点での時系列観測試料の解析を実施した。表層から水深5000mまでの海水を深度別に4-10L採取し、フィルターに微生物細胞をろ過捕集し、抽出した全ゲノムDNAを鋳型として、16S rRNA遺伝子の超可変領域をPCR増幅、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法を用いて細菌群集構造を解析した。また、PCR-クローニング法により、16S rRNA遺伝子の全長に基づく分子系統解析も行った。その結果、夏と冬の細菌群集の違い,深度による成層構造,SAR11グループが中深層の最優占系統群であること,K2よりS1で多様性(種数)が高いことが明らかとなった。本研究により、環境の季節的な変化が乏しいと思われる外洋域中深層において、細菌群集構造が季節的に変化する事が明らかとなった。今後、より詳細な微生物群集の季節的・経年的な動態を把握するため、次世代シークエンサーを用いた大規模な16S rDNA解析を実施し、海洋微生物の「優占種」から「稀少種」の時系列的な消長を精査する必要がある。さらに、黒潮続流域で取得した群集構造データを用いて、超並列シーケンサーによる群集構造データと環境データを合わせた多変量解析手法について検討した。その結果、環境パラメータを群集構造変動の制約条件とする冗長性分析により、群集構造の変動を左右する環境要因を抽出し、さらに観測点間の距離情報を加えることによって、環境変化による増減と空間的な分散の効果が群集構造の変動に及ぼす影響を比較する手法が有効であることが示された。
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