研究課題
正負のガウス曲率が交互周期的に並んだ1次元金属ピーナッツ型ナノカーボンの低温での電子構造を調べた結果、1次元金属の電子挙動であるTomonaga-Luttinger液体挙動を再現性良く観測することができ、そのベキ乗指数として約0.6になることがわかった。単層金属ナノチューブのベキ乗指数0.5に対して若干であるが大きくなる原因が、正負のガウス曲率(リーマン曲面)によって誘起される電気的ポテンシャルによることを理論的に初めて明らかにした。また、1次元ピーナッツ型凹凸周期構造以外に1次元ダンベル型周期構造についても理論的に検討した結果、ベキ乗指数が単層ナノチューブと比較して大きくなる結果が得られ、接合の矩形は指数に対してそれほど大きな影響を及ぼさないこともわかった。1次元金属ピーナッツ型ナノカーボンの接合構造を高分解能赤外振動分光と第一原理計算の解析により、一般化Stone-Wales転移で予想されるC_<120>構造異性体のうち、P8と呼ばれる異性体がもつピーナッツ型接合構造に良く似た接合構造をしていることを明らかにした。曲面量子系のシュレデインガー方程式から予想されている現象の1つに低温における電子散乱の増大化がある。この理論予想を実験的に検証するために、作製した1次元金属ナノカーボンを大気に曝すことなくその場で電子輸送特性の温度依存性を測定できる装置を製作した。これを用いて、H22年度に低温での電子輸送特性を調べて、電子散乱の増大に伴う抵抗増大の有無を明らかにする。
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